行政法 総論 (H12-8)
行政立法についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 行政立法は、行政庁の処分と並んで公権力の行使であり、公定力・不可争力などの効力が認められる。
2 罪刑法定主義の原則により、行政立法で罰則を設けることは、法律で個別・具体的な委任がなされている場合でも、許されない。
3 行政立法は政令、省令、訓令、通達などからなるが、いずれも行政機関を法的に拘束するものであり、裁判所はこれら行政立法に違反する行政庁の処分を取り消すことができる。
4 行政立法が法律による授権の範囲を逸脱して制定された場合には、裁判所はその行政立法を違法とし、その適用を否定することができる。
5 地方公共団体における法律の執行は、その長の定める規則に委任されるのが原則であり、条例により法律を執行することはできない。
解答 4
肢1・3 誤
行政立法には、法律の根拠が不要な国民の権利義務に直接効力を及ぼさない行政規則がある。
そのため、国民の権利義務に直接効力を及ぼす行政行為と同様の効力である公定力や不可争力などの効力は認められない。
また、通達のような行政規則自体は法律ではないので、通達に違反した行政行為(処分)をしても違法にはならないので、そのような行政行為を訴訟で取消すことは出来ない。
肢2 誤
これは憲法の問題でもある。委任立法(憲法73条6項但書)を思い出せば容易に解ける。
憲法73条6項
この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。
但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
肢4 正
委任立法は法律の範囲を逸脱してはならないのは当然である。逸脱すれば違法となり、司法審査の対象となる。
肢5 誤
これも憲法で勉強した通りである。
憲法第94条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
地方自治法2条2項
普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。
条例とは、地方公共団体の議会の議決を経て制定される自主立法をいい、長の制定する規則も広義では条例の中に含まれる。
地方自治法第14条1項
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
法令に違反しなければ、条例で法律を執行することもできる。
また、長の規則に委任されるのが原則であるわけでもない。
法律による授権が相当程度に具体的であり、限定されていれば条例に罰則を委任することができる。
地方自治法14条3項が条例に対する一般的な委任規定とされている。
地方自治法14条3項
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
この法律によって罰則への委任がなされているので、この法律の範囲内であれば条例によっても刑罰等を定めることができると解されている。