民法 身分法(H19-35)
Aが死亡した場合の法定相続に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。なお、Aの死亡時には、配偶者B、Bとの間の子CおよびAの母Dがいるものとする。
ア Aの死亡と近接した時にCも死亡したが、CがAの死亡後もなお生存していたことが明らかでない場合には、反対の証明がなされない限り、Aを相続するのはBおよびDである。
イ Aが死亡した時点でCがまだ胎児であった場合には、Aを相続するのはBおよびDであるが、その後にCが生まれてきたならば、CもBおよびDとともにAを相続する。
ウ Aにさらに養子Eがいる場合には、Aを相続するのはB、CおよびEであり、Eの相続分はCの相続分に等しい。
エ Aが自己に対する虐待を理由に家庭裁判所にCの廃除を請求して、家庭裁判所がこれを認めた場合には、たとえCに子Fがいたとしても、FはCを代襲してAの相続人となることはできず、Aを相続するのはBおよびDである。
オ Cが相続の放棄をした場合において、Cに子Fがいるときには、Aを相続するのはBだけでなく、FもCを代襲してAの相続人となる。
1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ
解答 1
(エ) 誤 (オ) 誤
廃除(892条)・欠格(891条)の場合は、大雑把にいうと相続人がいわば悪人ゆえに、被相続人の意思により、あるいは法律上当然に相続人から除外してしまうものです。
悪人かどうかは人によって違いますから、悪人だけ除外すればよいので、代襲相続するのです(887条)。
これに対して、相続の放棄は、放っておけば被相続人の財産を受継ぐのを(=単純承認)、あえて相続人が自らの意思で、被相続人の財産を一切承継しないことをいいます(915条)。
相続人の意思が尊重され、その意思がその直系卑属にも受け継がれるため、相続財産が一切承継されず、代襲相続されないのです。相続放棄の場合は代襲相続されないので注意しましょう。
以上の知識さえあれば、本問の肢エとオの正誤は簡単に判断できますね。エもオも誤りですから、解答の肢を切ると、1しか残りません。本番では、これでもう正解ですから、残りのア~ウはよくわからなくてもよいのです。
出題意図としては、相続の放棄と廃除の区別はつきますか?ただこれだけです。ア~ウもみていきましょう。
相続問題は単純な条文レベルの知識がほとんどですので、ポイントだけにします。
(ア) 正
AとCはどっちが先に死んだかわからない=同時死亡の推定(32条の2)。ですから、両者の間に相続は生じません。そうすると、Aの相続に関しては、Cを除外して考えればいいので、BとDが相続人になりますね(889、887条)。よって、アは正しいです。
(イ) 誤
胎児であっても、胎児を保護する観点から、以下の3つの場合に権利能力を有します。
不法行為の損害賠償(721条)・相続(886条)・遺贈(965条)ただし、生きて生まれたら遡って権利能力を取得することに注意=停止条件説(3条)
この場合、相続人となるのは、BとCであり、Aの母Dは相続人とはなりません。よって、イは誤りです。
(ウ)正
養子も縁組の日から、嫡出子(809条)となるので、法的には血のつながった実の子と同じです。ですから、実子と同じ相続分になります。よって、ウは正しいです。