行政法 国家賠償法 (H20-20)
国家賠償法1条にいう「公権力の行使」に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
1 裁判官の裁判過程における行為は、司法作用にかかわる行為なので、「公権力の行使」には該当しない。
2 国会議員の立法過程における行為は、国の統治作用にかかわる行為なので、「公権力の行使」には該当しない。
3 国家公務員の定期健康診断における国嘱託の保健所勤務医師による検診は、医師の一般的診断行為と異ならない行為なので、「公権力の行使」には該当しない。
4 国による国民健康保険法上の被保険者資格の基準に関する通知の発出は、行政組織内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。
5 勾留されている患者に対して拘置所職員たる医師が行う医療行為は、部分社会内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。
解答 3
国家賠償法1条の「公権力の行使」とは、国又は公共団体の作用のうち、権力作用のみならず、純粋な私経済作用及び国家賠償法2条の対象となるものを除いた非権力作用も包容するものである。
1 誤
上記の定義からすると、裁判官の裁判過程における行為も「公権力の行使」に該当し、国家賠償請求の対象となる(最判昭和43年3月15日)。
2 誤
立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合は、国会議員の立法過程における行為も「公権力の行使」に該当し、国家賠償請求の対象となる(最判昭和60年11月21日)。
3 正
保健所勤務医師の検診について、公権力の行使たる性質を有さないとしている(最判昭和57年4月1日)。
4 誤
上記の定義から、行政組織内部の行為であっても、「公権力の行使」には該当する。
5 誤
「勾留されている患者の診療に当たった拘置所の職員である医師が、過失により患者を適時に外部の適切な医療機関へ転送すべき義務を怠った場合において、国家賠償責任を負うものと解するのが相当である。」(最判平成17年12月8日)