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行政法 総論 (H20-8) 


次の1から5の文章は、現行法令の規定を基にしたものであるが、これらのうち、行政法学上、行政行為の「取消し」にあたるものはどれか。


1 市町村長等は、消防法上の危険物の製造所の所有者、管理者または占有者が、同法に基づき当該製造所について発せられた移転等の命令に違反したときは、当該製造所の設置許可を取り消すことができる。

2 国土交通大臣は、浄化槽を工場において製造しようとする者に対して行う認定の基準となる浄化槽の構造基準が変更され、既に認定を受けた浄化槽が当該変更後の浄化槽の構造基準に適合しないと認めるときは、当該認定を取り消さなければならない。

3 国家公務員(職員)に対する懲戒処分について不服申立てがなされた場合、事案の調査の結果、その職員に処分を受けるべき事由のないことが判明したときは、人事院は、その処分を取り消さなければならない。

4 一級建築士がその業務に関して不誠実な行為をしたとき、免許を与えた国土交通大臣は、免許を取り消すことができる。

5 国土交通大臣または都道府県知事は、建設業の許可を受けた建設業者が許可を受けてから一年以内に営業を開始しない場合、当該許可を取り消さなければならない。




解答 3 


この問題は、まず行政行為の職権取消しの定義と効果を押さえていれば後はそれを事例にあてはめれば正解できます。そして、似たような概念である撤回の定義と効果も押えておけばより正解を導き出しやすいでしょう。

結果的には、取消と撤回のポイントを理解しているかに尽きる問題です。

平成18年度問題10において、職権取消と撤回の比較問題が出ているので確認しておいて下さい。


(肢1) 誤

取消対象となる行政行為は、「製造所の設置許可」です。

後は、これを取消すための事情が、許可の前なのか後なのかを判断すればいいのです。

問題分の事実から「製造所について発せられた移転等の命令に違反」したことを理由に取消すわけですから、すでに「製造所」となった後の違反行為だということがわかります。

ですから、これは行政行為=許可後の事情を理由に取消す「撤回」となります。

よって、誤りです。


(肢2) 誤

取消対象となる行政行為は、「認定」です。

これを取消すための事情が、認定の前なのか後なのかを判断すればいいのです。

「既に認定を受けた浄化槽が当該変更後の浄化槽の構造基準に適合しない」ことを理由に取消すわけですから、既に「認定」を受けた後の事情であるということがわかります。

ですから、これは行政行為=認定後の事情を理由に取消す「撤回」となります。

よって、誤りです。


(肢3) 正

取消対象となる行政行為は、「懲戒処分」です。

これを取消すための事情が、懲戒処分の前なのか後なのかを判断すればいいのです。

「その職員に処分を受けるべき事由のないことが判明」したことを理由に取消すわけですから、「懲戒処分」を受ける前の事情であるということがわかります。

ですから、これは行政行為=懲戒処分前の事情を理由に取消す「取消」となります。

よって、正しく、これが正解肢です。


(肢4) 誤

取消対象となる行政行為は、「免許」です。

これを取消すための事情が、免許の前なのか後なのかを判断すればいいのです。

「一級建築士がその業務に関して不誠実な行為」をしたことを理由に取消すわけですから、既に一級建築士の「免許」を受けた後の事情であるということがわかります。

ですから、これは行政行為=免許後の事情を理由に取消す「撤回」となります。

よって、誤りです。


(肢5) 誤

取消対象となる行政行為は、「建設業の許可」です。

これを取消すための事情が、許可の前なのか後なのかを判断すればいいのです。

「建設業の許可を受けた建設業者が許可を受けてから一年以内に営業を開始」しないことを理由に取消すわけですから、既に「許可」を受けた後の事情であるということがわかります。

ですから、これは行政行為=許可後の事情を理由に取消す「撤回」となります。

よって、誤りです。

このように、問題文の事実を知らなくても、取消対象となる行政行為に着目して、行政行為前の事情を理由に取消す「取消」であるか、それとも行政行為後の事情を理由に取消す「撤回」であるかを判断できれば容易に正解を導くことができるのです。

以上より、正解は3となります。




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