行政法 行政手続法 (H21‐11)
行政手続法が定める不利益処分に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 弁明の機会の付与における弁明は、行政庁が書面ですることを認めたときを除き、指定された日時及び場所において、口頭で行うものとされている。
2 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするときは、聴聞を行わなければならないとされているが、ここにいう許認可等を取り消す不利益処分には、行政法学上の取消しと撤回の双方が含まれる。
3 行政指導に従わない場合に行われる当該事実の公表は、行政手続法上、不利益処分とされ、それを行う場合は、弁明の機会の付与を行わなければならないと規定されている。
4 聴聞において、当事者が利害関係者の参加を求めたにもかかわらず、行政庁がこれを不許可とした場合には、行政不服審査法に基づく不服申立てをすることができる。
5 申請に対して拒否処分を行う場合は、行政手続法上、不利益処分に該当するので、弁明の機会の付与を行わなければならない。
解答 2
1 誤
弁明手続については、国民の権利利益を保護しつつ簡易・迅速な手続が要求されるので聴聞よりも略式の手続であるため、書面による提出が原則である。
ただし、行政庁が口頭ですることを認めたときは、口頭ですることもできる(29条1項)。
2 正
不利益処分には、講学上の「取消し」および「撤回」が含まれる場合もあります。
どちらも特定人に対して、その権利を制限する処分であるからです。
3 誤
行政手続法上の不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分であり(行政手続法第2条4号本文)、事実の公表は、直接に義務を課し、又はその権利を制限する処分ではないので不利益処分に含まれない。
4 誤
行政庁又は主宰者が聴聞手続きの規定に基づいてした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない(行手法第27条1項)。
このような処分に対して、一つ一つ不服申立てができるとすると、不服申立ての結論がでるまで、聴聞手続きが終了せず、本来予定していた不利益処分をするかどうかの結論がでるまでに相当時間がかかってしまう。
そのため、行政活動が停滞し、円滑・迅速な行政運営をすることができなくなってしまうので、かえって国民生活にとって不利益となるからである。
なお、聴聞において利害関係人の参加を求めることができるのは、当事者ではなく主宰者であり、当事者には利害関係人の参加を求める権利はない(17条1項)。
5 誤
行政手続法上、申請に対する拒否処分は、不利益処分に該当しない(行手法2条4号ロ)。
そのため、弁明の機会の付与を行う必要はない。