行政法 行政不服審査法 (H21-14)
処分についての審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 裁決には理由を附すこととされているが、これが附されていなくとも、裁決が違法となることはない。
2 裁決においては、違法を理由として処分を取消すことはできるが、不当を理由として取消すことはできない。
3 裁決は、書面ですることが原則であるが、緊急を要する場合は、口頭ですることも許される。
4 裁決に対して不服がある場合でも、これに対して行政事件訴訟法による取消訴訟を提起することはできない。5 裁決においては、処分を変更することが許される場合でも、これを審査請求人の不利益に変更することはできない。
解答 5
1誤 3誤
裁決は、審査庁の意思を明確に外部に表示するため書面で行ないます(41条)。例外はありません。
その上で、審査庁の責任を担保するために、理由を附し、審査庁がこれに記名押印をしなければなりません。
理由がなければ、形式的な瑕疵があるとして裁決は違法となります。
書面+理由+記名押印が裁決のワンセットですので、押さえておきましょう。
2 誤
行政不服審査法の対象は、違法または不当な処分です。
4 誤
まだ勉強していませんが、取消訴訟とは、処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えのことです(行訴法第9条1項)。
そのため、裁決に対して不服がある場合は裁決の取消しの訴えをすることができます(行政事件訴訟法3条3項)。
また、このような知識がなくても、憲法で勉強したように国民には裁判を受ける権利があり(32条)、行政機関は終審として裁判をすることができない(76条)ということを思い出せば、行政機関である審査庁の裁決に対して、裁判所で争えるだろうことはわかるでしょう。
5 正
行政不服審査法の目的は、国民の権利・利益を救済することです。
もし、審査請求をして審査請求人の不利益に当該処分を変更できるなら、不利益となるリスクを取ってまで審査請求しないでしょう。
例えば、営業免許停止処分に対して審査請求をしたにもかかわらず、営業免許取消処分というより重い処分がなされれば、国民の権利・利益を救済することにならず目的に反します。
不服の対象となる処分以上には不利益とならないから、行政不服審査制度を利用しようと思うのです。
これを、不利益変更禁止の原則といいます(40条5項)。
したがって、裁決によって審査請求人の不利益に処分を変更することはできないのです。