民法 総則 (H21-27)
代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
1 Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。
2 未成年者Aが相続により建物を取得した後に、Aの法定代理人である母Bが、自分が金融業者Cから金銭を借りる際に、Aを代理して行ったCとの間の当該建物への抵当権設定契約は、自己契約に該当しないので、その効果はAに帰属する。
3 A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその買主となった場合に、そのままBが移転登記を済ませてしまったときには、AB間の売買契約について、Aに効果が帰属する。
4 建物を購入する代理権をAから与えられたBが、Cから建物を買った場合に、Bが未成年者であったときでも、Aは、Bの未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできない。
5 Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安い値で買った場合、AがBの欺罔行為につき善意無過失であったときには、B自身の欺罔行為なので、CはBの詐欺を理由にした売買契約の取消しをAに主張することはできない。
解答 4
1 誤
これは夫婦の日常家事代理の問題ではありません。
単純な権限の定めがない代理権(103条)の問題です。
「Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単身赴任した」ので、権限の定めがない代理権を与えています。
そうすると、妻Bは103条の保存行為、利用行為、改良行為の範囲内で代理権を有します。そして、「BがAの現金をA名義の定期預金とした」のは103条の利用行為にあたります。
ですから、代理権の範囲内の行為にあたります。
よって、その効果はAに帰属します。
2 誤
自己契約とは、同一の法律行為について当事者の一方が相手方の代理人となることをいいます。
そうすると、BはAの代理人であるが、抵当権設定契約は、AC間の契約なので、Bは一方当事者ではありません。
したがって、自己契約にあたらない点は正しいです。
しかし、まだ勉強していませんが、Bの行為は客観的にみて利益相反行為(826条1項)にあたります。
つまり、親の借金を子供の不動産で担保するわけですから、親にとって利益であり、子供にとって不利益となる行為ですから、親と子の利害が対立しますね。
このような利益相反行為をする場合、親権の濫用から子の利益を保護するために、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないのです。
「第826条
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」
特別代理人が子の代理人となって契約をすることで親権濫用かどうかを判断することができ、子の利益を保護することができるのです。
かかる選任の請求をせずに利益相反行為をした場合は、無権代理行為となります。
よって、その効果はAに帰属しないのです。
3 誤
「A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその買主となった場合」は、自己契約(108条)にあたりますね。
Aの許諾がない限り、無権代理となります。
よって、AB間の売買契約について、Aに効果は帰属しません。
4 正
「代理人は行為能力者であることを要しない。」のでしたね(102条)。
よって、Aは、代理人Bの未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできないのです。
5 誤
代理行為における、意思の不存在・瑕疵等においては、原則として代理人を基準に判断するのでしたね(101条1項)。
したがって、たとえAがBの欺罔行為につき善意・無過失であっても、CはBの詐欺を理由に売買契約の取消しをAに主張することができるのです。