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憲法 総則 (H21-3) 


次の文章のうち、そこで想定される「実質的意味の憲法」の理解の仕方が、憲法学における伝統的な分類に従えば、他とは異なっているものはどれか。


1 権利の保障が確保されず、権力の分立がなされていない社会は、憲法をもっているとはいえない。

2 固有の意味での憲法を論ずるには、古代憲法、中世憲法、近代憲法、現代憲法の順で、社会の基本構造を歴史的に叙述する必要がある。

3 日本の憲法の歴史は、大日本帝国憲法の制定につながる、西洋諸国に対する「開国」を出発点として、叙述されなくてはならない。

4 近代立憲主義が定着したフランス第三共和制においては、その体制の基本を定める法律を「憲法的」と形容して、憲法的法律と呼んでいた。

5 絶対君主制とは区別された意味での立憲君主制が、19世紀ヨーロッパの憲法体制では広く普及し、明治時代の日本もこれにならった。


解答 2 


この問題は憲法の分類を聞いている問題です。自由主義と結びついた憲法を立憲的意味の憲法といいます。

これに対して、単に国家統治の基本法を定めた法を固有の意味の憲法といいます。立憲的意味の憲法も固有の意味の憲法もある特定の内容を持っている憲法である点で実質的意味の憲法といわれています。

ただ、憲法という名のある法典が存在し、その内容の有無は問わないものを形式的意味の憲法といいます。

このように実質的意味の憲法には、立憲的意味の憲法と固有の意味の憲法との2種類あって、立憲的意味の憲法が自由主義と結びつくものであることを知っていることが重要です。

仮に、固有の意味の憲法という言葉自体を知らなくても、日本国憲法の問題なのだから、人権保障と結びつく肢なのか、あるいはそうではない肢なのかで判断すれば、消去法で何とか答えはだせるのではないでしょうか。


(肢1)

「権利の保障が確保されず、権力の分立がなされていない社会は、憲法をもっているとはいえない」ということは、逆に言うと、憲法があれば、権利が保障され、人権保障の手段である権力分立があるということです。ですから、人権保障と結びつく肢ですね。

ちなみにこの文章は、フランス人権宣言16条です。


(肢2)

特に人権保障と結びつく肢かどうかわかりません。


(肢3)

「日本の憲法の歴史」には、当然日本国憲法が含まれるわけです。そして、日本国憲法97条にあったように、欧米での多年にわたる自由獲得の歴史が受け継がれているのです。とりわけ日本では、主権者が天皇であった大日本帝国憲法から主権者が国民である日本国憲法に変わった大きな変革を持った歴史をもつわけです。ですから、「日本の憲法の歴史」を語る上では、日本国憲法によって、人権保障が目的となるまでの大日本帝国憲法の制定や西洋諸国に対する「開国」が叙述されなくてはならないのです。

ですから、人権保障と結びつく肢ですね。


(肢4)

近代立憲主義が定着したフランス第三「共和制」ですから、フランス革命後の人権宣言を経て、国王における人の支配から憲法による法の支配に移行しているということです。ですから、人権保障と結びつく肢ですね。


(肢5) 

絶対君主制から立憲君主制へ移行し、立憲民主主義へと至る過程を記述した肢ですから、肢の方向が現在の日本国憲法に至る過程についての記述といえます。ですから、人権保障と結びつく肢ですね。

ですから、消去法で2が正解となります。

このような過去問であまり見たことがない問題については、知識がなくてもすぐにあきらめずに日本国憲法の目的=人権保障という大きな視点に戻って考えてみることも重要です。


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