民法 債権 (H21-31)
A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。
ア AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償できるが、もしCが無資力のときは、Bに対して30万円の求償をすることができる。
イ AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、Cの負担部分が1:1:0であり(Cには負担部分がない)、また、Bが無資力のときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償することができる。
ウ DがAに対して60万円の債務を免除した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。
エ DがAに対して連帯の免除をした場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であったときは、Aは、20万円の分割債務を負い、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。
オ A、B、C三人の負担部分が平等である事情の下で、DがAに対して連帯の免除をした場合に、Bが債務全額を弁済したときに、もしCが無資力であったとすると、Cが弁済することができない部分のうちAが負担すべき10万円はDが負担する。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・エ
5 ウ・オ
解答 3
ア 正
連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する(444条本文)。
したがって、この場合、Cの無資力の危険は、AとBで負担する。
よって、Aは、Cが無資力のときは、Bに対して30万円の求償をすることができる。
イ 誤
アの通り、無資力者Bの危険は、AとCが負担することになる(民法第444条本文)。
この時点で、Aは、Bに20万円の求償をすることはできない。
なお、Cは負担部分がゼロであり、その場合、分担する必要があるかどうかについては、負担部分ゼロの者も無資力者の負担部分を分担すべきとした判例がある(大判昭和12年1月20日)。
この場合、Aは、Bの負担部分の半分である15万円につきCに対して求償することができる。
ウ 正
連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる(民法第437条)。
したがって、DがAに対して60万円の債務を免除した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。
エ 誤
連帯の免除とは、債権者が連帯債務者の連帯債務を負担部分までの分割債務にすることをいい、連帯債務者の一部の者に対して行なう相対的連帯免除と連帯債務者全員に対して行う絶対的連帯免除がある。
本問では、DはAに対してのみに行なった相対的連帯免除である。
そのため、Aは20万円の分割債務を有することになり、B及びCは60万円ずつの連帯債務を負っていることになる。
オ 正
連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する(445条)。
したがって、Bが債務全額を弁済した場合において、Cが無資力であったときは、連帯の免除がなければAとBがCの負担部分20万円を平等に負担する。つまり、連帯の免除がなければAが負担すべき10万円については、連帯の免除によって、Aではなく債権者Dが負担することになる。連帯の免除によって、Aは負担部分である20万円以上については支払う必要がないからである。