民法 債権 (H21-32)
他人の財産に対する費用の支出とその償還請求に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。
ア A・B間の家屋売買契約が解除されても、買主Aは解除前に支出した共益費の償還を受けるまで家屋を留置することができるが、Aは、留置中にこれを使用することにより、法律上の原因なく利得することとなるから、その利得を不当利得として返還する義務がある。
イ Aは、Bに対して自己が所有する士地を売り渡したが、この売買契約と同時に買戻しの特約をしていた場合において、Aが買戻権を行使したときは、この売買契約成立後Aが買戻権を行使するまでにBがその土地につき必要費を支出していたとしても、Bは、Aに対してこの費用の償還請求をすることができない。
ウ Aは、Bから建物を賃借して居住し、その間に同建物につき有益費を支出したが、その後に、B・C間で賃貸人たる地位の移転が生じた場合に、Aは、原則としてBに対しては有益費の償還を請求することができない。
エ Aは、Bに対して自己が所有する建物を賃貸していたが、Bが有益費を支出して同建物に増築部分を付加して同建物と一体とした場合において、後にその増築部分が隣家の火災により類焼して失われたときにも、Bは、Aに対して増築部分につき有益費の償還請求をすることができる。
オ Aは、Bと寄託契約に基づき受寄物を保管していたが、保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、Bに対し、その費用および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ
解答 3
ア 正
Aは契約解除後に家屋を使用しているため、本来は賃料を支払わなければならない。そのため、家屋の使用について法律上の原因なく不当に利得を得ている。留置権を主張できるからといって、家屋の使用が正当化されるわけではない。留置権は、家屋の使用権原にはなりえないからである。
イ 誤
買戻特約の場合は、196条の占有権の場合と同じように考えればよい。したがって、買主Bは売主Aに対して必要費の償還請求をすることができる。
ウ 正
Aは貸主に対して有益費の償還を請求することができる。しかし、B・C間で賃貸人たる地位の移転が生じた場合、貸主はCに変更しているため、AはBではなくCに対して有益費の償還を請求することができる。
エ 誤
有益費償還請求するためには、増加額が現存する場合なので、現存しない場合は有益費の償還請求をすることができない。
オ 正
受寄者は、受寄物の保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、寄託者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる(民法665条、650条1項)。したがって、AはBに対し、その費用および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。