民法 身分法(H21-35)
相続欠格と相続人の廃除に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。
ア 相続欠格においては、その対象者となりうるのは全ての推定相続人であるが、相続人の廃除においては、その対象者となるのは遺留分を有する推定相続人に限られる。
イ 相続欠格においては、その効果は一定の欠格事由があれば法律上当然に生ずるが、相続人の廃除においては、その効果は被相続人からの廃除請求による家庭裁判所の審判の確定によって生ずる。
ウ 相続欠格においては、被相続人および同順位相続人は欠格の宥恕をすることができるが、相続人の廃除においては、被相続人は審判確定後は家庭裁判所にその取消しを請求することはできない。
エ 相続欠格においては、被相続人の子が欠格者となった場合には、欠格者の子は代襲相続人となることができないが、相続人の廃除においては、被相続人の子について廃除が確定した場合でも、被廃除者の子は代襲相続人となることができる。
オ 相続欠格においては、その効果としてすべての相続にかかわる相続能力が否定されるが、相続人の廃除においては、その効果として廃除を請求した被相続人に対する相続権のみが否定される。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ
解答 1
ア 正 イ 正
相続欠格とは、被相続人の生命等に対して故意に違法な侵害をした相続人は、その行為に対する民事上の制裁として、法律上当然に相続人たる資格を奪われる制度です。
そのため、相続欠格の対象者となりうるのは全ての推定相続人です(891条)。
これに対して、推定相続人の廃除とは、被相続人自らの請求に基づいて、家庭裁判所がその者の相続権を剥奪する制度です。
相続人の廃除の対象者となるのは遺留分を有する推定相続人に限られます(892条)。
遺留分を有する推定相続人に限定しているのは、もし被相続人が遺留分のない相続人に相続させたくないならば、遺言で相続させなければよいからです。
ウ 誤
廃除においては、被相続人の意思が尊重されるため、被相続人は、廃除した相続人との関係が修復したなどの場合、生前の請求または遺言によって、いつでも廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます(894条)。なお、推定相続人とは、被相続人となるべき者の廃除請求時点現在において、仮に相続が開始した場合に相続人となりうるものを言います。
エ 誤
相続の廃除(892条)・欠格(891条)の場合は、大雑把にいうと相続人がいわば悪人ゆえに、被相続人の意思により、あるいは法律上当然に相続人から除外してしまうものです。
悪人かどうかは人によって違いますから、悪人だけ除外すればよいので、代襲相続するのです(887条)。
オ 誤
相続欠格および相続人の廃除のどちらの場合も、被相続人との関係で相続権が否定されるだけであり、他者との関係ではなお相続することができる。例えば、 父親との関係では子は欠格者あるいは廃除者となっても、母親との関係では相続人になれるのです。