行政法 行政事件訴訟法 (H22-18)
不利益処分の取消訴訟において原告勝訴判決(取消判決)が確定した場合に、当該判決について生ずる効力に関する次のア~エの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 処分をした行政庁は、判決確定の後、判決の拘束力により、訴訟で争われた不利益処分を職権で取り消さなければならない。
イ 判決後に新たな処分理由が発生した場合、処分をした行政庁は、これを根拠として、判決の拘束力と関わりなく、原告に対しより厳しい内容の不利益処分を行うことができる。
ウ 不利益処分をした処分庁が地方公共団体に所属する場合、不利益処分にかかわった関係行政庁のうち国に所属する行政庁には、判決の拘束力は及ばない。
エ 判決の拘束力が生じるのは主文に限られず、主文に含まれる判断を導くために不可欠な理由中の判断についても及ぶ。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・ウ
4 イ・エ
5 ウ・エ
解答 4
ア 誤
取消判決がなされると、当該処分は、処分時に遡及して効力を失い、はじめから当該処分がなされなかったのと同じ状態になるが、このような取消判決の力を形成力といいます。
したがって、行政庁は、訴訟で争われた不利益処分を職権で処分を取り消す必要はないのです。
イ 正 ウ 誤 エ 正
取消訴訟において、裁判所の判断に対して、行政庁は従わなければなりません。
憲法76条2項にあるように、行政機関は、終審として裁判を行うことができませんから、紛争解決の最終判断権者は裁判所なのです。
ですから、判決の主文だけでなく判決理由中の判断についても、被告たる行政庁および関係行政庁は拘束されます。
このような力を拘束力といいます(33条)。
なお、請求認容判決がでても、別の理由から同一内容の行政処分をすることは妨げられません。
拘束力の及ばない範囲であれば、再度取消処分をすることができるのです。