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憲法 統治 (H22-7) 


議事手続は、最終的には各議院の自律権にゆだねられる問題だとしても、憲法が定める定足数のハードルの低さを考慮に入れると、ごく少数の議員のみによって議決が成立することのないように配慮しつつ、多数決による議決の成立可能性を確保するよう慎重な考慮が求められる。次に掲げるのは、かつて衆議院における議事手続について争われた事例である。そこで採られるべき妥当な解決として、先例および通説の立場を示すのは、次の1-5の記述のうちどれか。


1948年10月14日、衆議院における内閣総理大臣指名の手続において、以下のような投票が行われた。


議員定数 466

吉田茂 184票

片山哲 87票

その他 43票

白票 86票


1 総議員の過半数に達したものがいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。

2 白票を投じたものも出席議員数に算入した上で、出席議員の過半数に達したものがいないため、上位2名による決選投票になる。

3 出席議員の3分の2以上の票を集めた候補がいないため、投票をやり直した上で、最も得票の多いものが指名される。

4 白票には賛否いずれの意思表示も含まれていないから、白票を除いて計算すると、出席議員の過半数に達した吉田茂が直ちに指名される。

5 衆議院ではいずれの候補も過半数に達しないため、参議院の指名を国会の指名とする。




解答 2


出題形式は、一肢選択問題です。

肢1、3、5

これらの肢は条文知識で正誤の判断ができます。


憲法第56条2項

両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

この条文から、議決は、原則として「出席議員の過半数」であることがわかります。そのため、肢1の「総議員」および肢3の「3分の2以上」の部分が誤りです。


憲法第67条2項

衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。


この条文から、内閣総理大臣の指名については、衆議院の優越があります。

そのため、肢5の「参議院の指名を国会の指名とする。」という部分が誤りです。


残りの肢2と4は、問題文をヒントに解答することになります。両者の違いは、白票を出席議員数に算入するか否かです。

ここで問題文をみると、「憲法が定める定足数のハードルの低さを考慮に入れると、ごく少数の議員のみによって議決が成立することのないよう配慮しつつ、多数決による議決の成立可能性を確保するよう慎重な考慮が求められる。」としていますが、ポイントは「ごく少数の議員のみによって議決が成立することのないよう配慮しつつ」の部分です。

白票を出席議員数に算入すると、出席議員数は400人となり、その過半数は201票となります。

これに対して、白票を出席議員数に算入しなければ、出席議員数は314人となり、その過半数は158票となります。

そうすると、肢4の方が、「少数の議員のみによって議決が成立する」ことになるので、問題文とは逆になることから誤りとなります。

以上より、肢2が正解となります。この問題は、形式的には余り見たことのない問題ではありますが、条文知識と問題文のヒントで十分正解が可能ですので、このような出題形式に惑わされないことが肝心です。




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