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行政法 総論 (H23-10)


次のア~オのうち、伝統的に行政裁量が広く認められると解されてきた行政行為の組合せとして、最も適切なものはどれか。


ア 道路交通法に基づく自動車の運転免許

イ 電気事業法に基づく電気事業の許可

ウ 建築基準法に基づく建築確認

エ 食品衛生法に基づく飲食店の営業許可

オ 公有水面埋立法に基づく公有水面の埋立免許


1 ア・オ

2 イ・ウ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 エ・オ



解答 3  


本問は、「行政裁量が広く認められる」行政行為というのが出題の意図ですから、行政行為の種類がわかっただけでは解答がでない問題です。といっても、難しいわけではありません。マインドマップ(行政行為の種類①)の分類を理解していればそれで答えがでます。

まずは、選択肢の行政行為の種類を個々に判断していきましょう。


(肢アとエ)

アの運転免許やエの飲食店の許可は、行政行為の「許可」の具体例です。

許可のポイントとしては、個人でもできる行為だが、個人の自由に任せると他者への危険が生じたり、迷惑となったりするような行為かどうかでしたね。

許可=禁止の解除ということです。


(肢イとオ)

イの電気供給事業の許可やオの公有水面の埋め立て免許は、行政行為の「特許」の具体例です。

特許のポイントとしては、個人ではできないような事業等に関わることかどうかでしたね。


(肢ウ)

建築確認は、行政行為の「確認」の具体例でしたね。

建築基準法に基づいて建築主事が行う建築確認は、文字通り確認です。

建築物などの建築計画が建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかを着工前に審査して、建築確認がなされると着工できるようになります。

これらの行政行為の種類の分類は簡単にできるはずです。

また、肢ウが解答とならないこともわかるでしょう。解答が2種類であるのに、1種類しかないからです。ただ、もし個数問題であった場合は、解答肢からは正解はわかりません。

そこで、マインドマップ(行政行為の種類①)の分類が役に立つのです。

ウの確認とそれ以外の行政行為(許可および特許)との違いは何でしょうか。

それは、法律行為的行政行為か準法律行為的行政行為かどうかです。

マインドマップ(行政行為の種類①)の分類の最初の区別でしたね。

行政の意思表示に従った法律効果が発生するのが法律行為的行政行為であり、行政の意思表示とは無関係に法律に従って法律効果が発生するのが準法律行為的行政行為です。

確認は準法律行為的行政行為ですね。

準法律行為的行政行為は、法律によって効果が定められているので効果については裁量を認める余地はないものをいいます。

ですから、確認の場合は、行政裁量がないのです。

このように、法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為との区別がつけば、ウが正解肢ではないことがわかります。

では、許可と特許のどちらが正解肢となるでしょうか。つまりどちらの方が、行政裁量が広いのでしょうか。

許可と特許の違いは、これも上位概念に戻って、マインドマップ(行政行為の種類①)の分類の区別から判断すればいいですね。

許可とは、一般に禁止されていることについて、特定の者に解除する行為をいい、命令的行為の一つです。

特許とは、 新たに権利や地位等の法律関係を設定し特定の者に与える行為をいい、形成的行為の一種です。

許可と特許の違いは、命令的行為か形成的行為かの違いです。

では、命令的行為と形成的行為のどちらの方が、行政裁量が広いのでしょうか。


命令的行為とは、行政が、本来国民が生まれながらに有している活動の自由に制限を課して、一定の行為・不行為を命じたり、その義務を解除したりする行為をいいます。

これに対して、形成的行為とは、行政が、国民が本来有していない特殊な権利、能力その他法的地位を与えたり奪ったりする行為をいいます。

命令的行為とは、自由権の制約ですから、憲法の理念に照らして、できるだけ制約されない方がいいものです。

つまり、行政の裁量で国民の自由権が過度に制約されると人権侵害になりますね。ですから、できる限り行政裁量は狭い方がいいのです。

行政裁量が狭いということは、それだけ司法審査が及びやすくなるのです。

これに対して、形成的行為は、端的に言うと、特殊の法的地位の付与ですから、自由権の制約ではありません。

そのため、このような特殊な法的地位を付与するかどうかは、専門的技術的な判断が必要であり、行政の専権事項として、その判断に委ねられるのです。ですから、行政裁量が広いのです。

以上より、正解は、形成的行為である特許(イとオ)の肢3が正しいということになります。

このように、本問は、単に知識として特許かどうかがわかればよいのではなく、その上位概念である命令的行為か形成的行為かの区別がつくかどうかが出題の意図なのです。

ここがわかっていないとまた特許と許可の知識だけを復習することになって問題を少し変えられれば間違えてしまうので注意しましょう。

以上より、マインドマップ(行政行為の種類①)の分類の区別が頭に入っていれば正解できた問題なのです。

マインドマップで上位概念や分類についてしっかり学ぶことが重要であることがわかる問題なのです。

知識の整理と共に上位概念や下位概念、比較の視点で改めてマインドマップを見直してみてください。



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