行政法 行政手続法 (H23-11)
次の記述のうち、行政手続法に規定されている内容として正しいものはどれか。
1 行政庁は、申請に対する拒否処分及び不利益処分のいずれの場合においても、これを書面でするときは、当該処分の理由を書面で示さなければならない。
2 行政庁は、聴聞を行うに当たっては、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、聴聞の期日及び場所を通知しなければならないが、差し迫った必要がある場合には、書面によらず口頭でこれを行うことができる。
3 行政庁は、申請に対する処分については、審査基準を定めるものとされ、申請者から求めがあった場合は、これを書面で交付しなければならない。
4 弁明の機会の付与における弁明は、行政庁が弁明を記載した書面ですることを認めたときを除き、口頭で行うものとされている。
5 行政庁は、申請に係る審査が標準処理期間を超える場合には、申請者および利害関係者に対して、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを書面で通知しなければならない。
解答 1
(肢1) 正
書面で申請に対する拒否処分をする場合は、書面で理由の提示をしなければなりません(行政手続法8条2項)。書面で理由を提示することにより、口頭で理由を提示するよりも拒否処分に慎重を期すとともに不服申立て等の便宜を考慮するためです。
申請に対する拒否処分の場合と同様に、書面で不利益処分をする場合は、理由の提示も書面でしなければならないのです(行政手続法14条3項)。
(肢2) 誤
個人の人権保障の側面から考えると、被処分者に十分な防御権を行使させるためには、まずは、不利益処分をすることの文書による通知が必要です(行政手続法15条1項)。
そして、通知文書には、予定される不利益処分の内容、聴聞期日、場所等が記載されている必要があります。内容等がわからなければ、反論のための準備ができないからです。
このように、聴聞をする際は、必ず書面による通知が必要であり、差し迫った必要がある場合には、書面によらず口頭でこれを行うことができるわけではありません。
なお、公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、聴聞手続を執ることができないときは、聴聞手続きなしに不利益処分をすることができます(行政手続法13条2項1号)。
(肢3) 誤
できるだけ審査基準を具体的に定めて客観化し、また国民からもわかるように公にしておく必要があります(行政手続法5条)。
そのため、審査基準の定めおよびその公表は、法的義務です。
審査基準の定めが公表されている以上、改めて申請に対する処分について書面で交付する必要はないのです。
(肢4) 誤
弁明手続については、国民の権利利益を保護しつつ簡易・迅速な手続が要求されるので聴聞よりも略式の手続であります。
そのため、書面による提出が原則です。ただし、行政庁が口頭ですることを認めたときは、例外的に口頭ですることもできます(行政手続法29条1項)。
(肢5) 誤
「行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない(行政手続法9条)。」
例えば、本問のように標準処理期間よりも処分が遅くなっているような場合に、申請者が行政に自己の申請手続きについてどうなっているのか、その審査の進行状況などを問い合わせてきたら行政は情報提供するように努力しなければならないのです。
申請者の権利の利益のための制度なので、行政から積極的に情報提供する法的な義務はなく、努力義務であるということを押さえておきましょう。