行政法 国家賠償法 (H23-19)
国家賠償法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 国家賠償法2条にいう「公の営造物」は、民法717条の「土地の工作物」を国家賠償の文脈において表現したものであるから、両者は同じ意味であり、動産はここに含まれないと解されている。
2 国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるが、無過失責任と結果責任とは異なるので、不可抗力ないし損害の回避可能性のない場合については、損害賠償責任を負うものとは解されない。
3 外国人が被害者である場合、国家賠償法が、同法につき相互の保証があるときに限り適用されるとしているのは、公権力の行使に関する1条の責任についてのみであるから、2条の責任については、相互の保証がなくとも、被害者である外国人に対して国家賠償責任が生じる。
4 国家賠償法2条が定める公の営造物の設置又は管理の瑕疵について、設置又は管理に当る者(設置管理者)とその費用を負担する者(費用負担者)とが異なるときは、費用負担者は、設置管理者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときに限り、被害者に対する損害賠償責任を負う。
5 国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるから、公の営造物の設置又は管理の瑕疵の判断にあたっての考慮要素は、事件当時における当該公の営造物の客観的状態に限られる。
解答 2
1 誤
公の営造物とは、 国又は公共団体により直接に公の目的に供用されている個々の有体物であり、情報などの無体財産を含まないとされています。
例えば、学校、病院、図書館、老人ホームなどです。
「公の営造物」という言葉からすると不動産だけのようにも思えますが、不動産だけでなく、動産などの有体物も含まれると解されています。
例えば、公用車や警察官等の使用するピストルなども「公の営造物」として広く認められています。
2 正
国家賠償責任が無過失責任であるからといって、地震や洪水などの天災による事故や営造物の設置管理者に損害を回避する措置をとるための余裕がなかったような不可抗力の場合にも国等が賠償責任を負うのは、国民の税金を使用する点からしてもいきすぎです。
ですから、不可抗力による損害については、国又は公共団体は損害賠償の責任は負わないのです。
3 誤
外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、国家賠償法が適用されます(相互保証主義)。
4 誤
営造物の設置・管理する者と営造物の設置・管理の費用を負担する者とが異なる場合に、どちらか一方にしか損害賠償請求できないとすると、原告が被告を誤ってしまった場合、救済の機会を失う恐れがあります。
そのため、営造物の設置・管理する者と営造物の設置・管理の費用を負担する者の両方に損害賠償請求できるようにしてあるのです。被害者の保護を厚くしようという趣旨です。
ですから、費用負担者は、「設置管理者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときに限り、」という限定的な場合のみ賠償責任を負うわけではないのです。
5 誤
不可抗力ではなくても、通常予測し得ない異常な用法で営造物を利用したために損害が発生した場合も賠償責任は否定されます。
これを用法逸脱の場合といいます。
例えば、公立学校において階段のついていないテニスの審判台の後部から降りようとしたという通常予測し得ない異常な用法でテニスの審判台を利用したために、その審判台が倒れ、幼児がその下敷きになって死亡し損害が発生した場合は、保護者は国に2条の賠償責任を問えないのです。
このように、公の営造物の設置又は管理の瑕疵の判断にあたっての考慮要素は、事件当時における当該公の営造物の客観的状態に限られず、被害者の行為なども考慮に入れて判断するのです。