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行政法 地方自治法 (H23-22)


地方自治法の規定する普通地方公共団体の執行機関に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


1 地方自治法は、普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、条例の定めるところにより、委員会又は委員を置くと規定している。

2 地方自治法における執行機関は、行政官庁の命を受け、実力をもって執行することを任務とする機関をいう。

3 執行機関として置かれる委員会は、法律の定めるところにより法令又は当該普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、規則その他の規程を定めることができる。

4 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限の帰属につき疑義が生じたときは、自らその権限を行使することができる。

5 執行機関としての長、委員会及び委員は、一定の場合、議会において議決すべき事件について専決処分を行うことができる。



解答 3 


1 誤

本問は、法律と条例の関係を考えるとわかるでしょう。条例は、法律の範囲内で定めることができるものです(憲法94条)。ですから、原則的に、執行機関について法律で委員会又は委員を置く旨の規定がないにも関わらずいきなり条例のみで委員会又は委員を置く旨の規定を定めることはできないのです。したがって、「条例の定めるところにより」ではなく、「法律の定めるところにより」が正しいのです。

なお、本問のような、「条例」か「法律」かどうかというところは、本試験ではなかなか気づかないところです。ですから、間違えても仕方がないでしょう。


2 誤

本問は、行政法総則で勉強した執行機関の説明です。執行機関とは、行政庁の命を受け行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関をいいます。

例えば、自衛官、警察官、海上保安官、徴税職員、消防職員などです。

地方自治法における執行機関は、長や委員会等などであり別の意味です。肢1がヒントになっていますから、この問題は、誤りだと確実にわかっていただきたい問題です。


3 正

これは138条の4第2項そのままの規定です。自治体には、長以外の執行機関として行政委員会が置かれています。行政の中立性や公平性を確保するためです。 例えば、選挙の執行を自治体の長がすることになれば、選挙される長の利益に行われるのではないかと公平性に問題が生じるので、選挙の執行は選挙管理委員会という長とは別の第三者的な機関が行うのです。また、教育や警察については政治的中立性が求められるので、教育委員会や公安委員会が行っています。

 これらの行政委員会は、自らの名前と権限で自治体の仕事を担っています。そのため、執行機関として置かれる委員会は、法律の定めるところにより法令又は当該普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、規則その他の規程を定めることができるのです(138条の4第2項)。


4 誤

長の権限には、①統括代表権(147条)、②事務執行権(148条)、③総合調整権(180条の4等)、④規則制定権(15条)、⑤職員の任免権、指揮監督権(154条)、⑥事務組織権(155条、156条、158条)、⑦所管行政庁の処分の取消・停止権(154条の2)、⑧公共団体等の監視権(157条)があります。

これらのうち、③総合調整権とは、 地方公共団体の一体性を確保するために、長には総合調整権があります。

本問がこれにあたります。そのため、普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限につき疑義が生じたときは、これを調整するように努めなければならないのです(第138条の3第3項)。

 その他の総合調整権は、例えば、委員会等に関して、その事務を執行する機関の組織等について長に勧告権が認められています(180条の4)。


5 誤

「長の専決処分に関する制度」とは、本来議会の議決を経るべき処分について一定の場合に長がその議決を経ずに処分を行うことをいいます(地方自治法第179条1項・180条1項)。

議会が成立しないときや特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認められるときなどに利用される処分です。

執行機関である長と議会との独立性が強いために認められる制度です。

この専決処分は長にのみ認められ、委員会及び委員には認められていないのです。



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