行政法 総論 (H23-9)
行政立法についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 省令は、各省大臣が発することとされているが、政令は、内閣総理大臣が閣議を経て発することとされている。
2 各省の外局として置かれる各庁の長や各委員会は、規則その他の特別の命令を発することができるが、これについては、それぞれの設置法などの法律に別の定めを要する。
3 内閣に置かれる内閣府の長である内閣官房長官は、内閣府の命令である内閣府令を発することができる。
4 各省大臣などは、その所掌事務について公示を必要とするときは、告示を発することができるが、これが法規としての性格を有することはない。
5 政令及び省令には、法律の委任があれば、罰則を設けることができるが、各庁の長や各委員会が発する規則などには、罰則を設けることは認められていない。
解答 2
(肢1および肢3) 両方とも誤
法規命令には、政令、府令、省令、規則、庁令の5種があります。
政令は内閣、府令は内閣総理大臣、省令は各省大臣、規則は、府省の外局である庁の長、庁令は、例えば海上保安庁長官が、それぞれ制定します。
(肢2) 正
直接の根拠は、以下の国家行政組織法第13条です。
「各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。」
しかしながら、これを国家行政組織法第13条の問題であると思うのは間違いです。それが出題の意図ではありません。
憲法でも勉強したように委任命令を制定するためには、法律による委任が必要です。この委任の根拠となる法律が、国家行政組織法第13条ということです。憲法73条6項の具体化が国家行政組織法第13条ということです。
ですから、この問題を抽象的に捉えれば、「行政が命令を定めるためには、法律の委任が必要である」という問題と同じであるということです。
つまり、行政が命令を定めるためには、法律による委任が必要であるということさえ知っていれば、国家行政組織法第13条の条文自体を知らなくても正解できる問題なのです。この点を間違えないようにしましょう。
(肢4)
これは少し迷ったかもしれません。
告示とは、国や地方公共団体などの公の機関が、その意思決定や事実等の必要な事項を一般に公に知らせるその行為又は形式を言います。
一般に国の機関の告示は、官報に掲載する方法で、地方公共団体の機関の告示は、その地方公共団体の公報に掲載する方法によって行われます。
通常は、行政規則の一種として分類されますが、テキストの記載してあるとおり、告示は多種多様であり、法規命令または行政規則の両方の場合があります。
(肢5)
これも直接の根拠は、国家行政組織法第13条2項で準用する12条3項です。
「省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。」
しかし、出題の意図は、この具体的な条文の知識ではなく、委任命令を制定するためには、法律による委任が必要であるということです。
憲法73条6項但書の具体化が国家行政組織法第13条ということです。
憲法では政令としか記載されていませんが、これは命令の代表として規定されていると解釈するのです。
ですから、法律の委任があれば、命令の一種である規則にも、罰則を設けることができるのです。