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憲法 統治 (H24-3) 


内閣の「責任」について書かれた次の記述のうち、最も適切なものはどれか。


1 日本国憲法における内閣は、衆議院に対してのみ「責任」を負うのであり、参議院に対しては「責任」を負っていない。

2 日本国憲法は内閣の「連帯責任」を強調しており、特定の国務大臣に対して単独の「責任」を負わせることは認めていない。

3 明治憲法では、君主に対する内閣の「連帯責任」のみが規定されており、衆議院に対する「責任」は想定されていなかった。

4 内閣の「責任」のとり方は任意かつ多様であるべきなので、日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはない。

5 大臣に対する弾劾制度を認めない日本国憲法においては、内閣に対して問われる「責任」は、政治責任であって狭義の法的責任ではない。



解答 5


1 誤

第66条3項から明らかに間違いです。

第66条3項

内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

内閣は国会に対して連帯責任を負うのであって、衆議院に対してのみ「責任」を負うのではありません。


2 誤

内閣の一体性から内閣は国会に対して連帯責任を負うのが原則ですが、だからといって各大臣が個別に責任を負わないという趣旨ではありません。

国務大臣に対する問責決議などによって、辞任することもよくあることですね。


3 誤

明治憲法の下では、天皇が行政権の担い手であり、内閣は、憲法上の機関ではなく、勅令によって組織されていました。そのため、内閣が責任主体になることはなく、国務大臣が個別に天皇に助言する程度でした(明治憲法55条)。


4 誤

これは69条を思い出せばよいでしょう。

第69条

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

このように、内閣が総辞職しなければならない場合があるので、日本国憲法の下で総辞職が必要的に要求されることはありますね。


5 正

第66条3項から内閣が国会に対して連帯責任を負うのは確かですが、いかなる場合に、つまり、どのような原因があればどのような責任を負うのかは、明確にされていません。

そのため、この責任は政治的責任と考えられています。

もし法的責任であれば、要件と効果が明確に法定されているはずだからです。例えば、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求や刑法上の処罰(例:殺人罪)などを思い浮かべるとわかるでしょう。不法行為をすれば、金銭を支払うという責任を負う、人を殺せば、死刑や懲役刑という責任を負う、というように、責任の内容と責任の原因が法定されているはずなのです。

なお、肢4で解説したとおり、内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決されれば、総辞職する場合もありますが、これは、総辞職に追い込む手段について法定したものであって、どういう場合に内閣不信任決議をするかは何ら明確となっていません。ですから、69条も政治的責任というべきなのです。




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