民法 身分法 (H25-35)
婚姻および離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。
ア 未成年者が婚姻をするには、父母のいずれかの同意があれば足り、父母ともにいない未成年者の場合には、家庭裁判所の許可をもってこれに代えることができる。
イ 未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされる。したがって当該未成年者は、法定代理人の同意がなくても単独で法律行為をすることができ、これは当該未成年者が離婚をした後であっても同様である。
ウ 養親子関係にあった者どうしが婚姻をしようとする場合、離縁により養子縁組を解消することによって、婚姻をすることができる。
エ 離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しない。
オ 協議離婚をしようとする夫婦に未成年の子がある場合においては、協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができる。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 ア・オ
4 イ・ウ
5 イ・エ
解答 2
本問の出題形式は、組み合わせ問題です。
主に未成年者の婚姻に関する問題です。
組合せ問題であり、基本的な条文知識で正解できるので是非とも得点源にしていただきたかった問題です。
ア 誤
(未成年者の婚姻についての父母の同意)
第737条
未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
未成年者は、社会的経験に乏しく、婚姻についても十分な判断力があるとはいえないので父母の同意を要求して未成年者の婚姻の保護を図っているのです。
同意権者は未成年者に対して最も愛情と理解がある実際の父母であり、親権者のような法定代理人ではない点に注意してください。両親が離婚していても、父母の同意が必要となります。
ただし、常に、両親の同意が必要であるとすると、未成年者といえども婚姻の機会が限定され、個人の自由意志を尊重するために、両親の一方が同意しない場合は、他方の同意でも婚姻ができるのです。
また、両親の一方が死亡していたり、病気で意思を伝えられなかったり、行方不明であったりするために同意を得るのが困難である場合は、一方の父母の同意でも婚姻ができるのです。
なお、父母の同意を得ずに婚姻し、届出が誤って受理された場合であっても未成年者の意思を尊重し取り消し事由とならず有効となります。
したがって、未成年者が婚姻する場合、原則として父母の同意が必要であり、一定の場合に一方の同意があればよいとされています。
また、父母のどちらもいない場合は、同意できない以上同意は不要であり、未成年者の意思のみによって婚姻できます。家庭裁判所の許可は不要です。
イ 正
未成年者が婚姻をすると、成年として取り扱うという成年擬制があります(753条)。
第753条
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
例えば18歳で婚姻をしたとすると、民法上では成年として取り扱われるのです。この場合、離婚をしても成年として扱われます。いったん成年者となった者が未成年者となると法律関係が複雑になるからです。
ウ 誤
養子・養親間では、親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない(736条)。
エ 誤
(離婚等による姻族関係の終了)
第728条
姻族関係は、離婚によって終了する。夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
夫婦関係が離婚によって終了するのと同時に、妻の父母などとの姻族関係も終了します。
夫婦の一方が死亡した場合は、それだけで生存配偶者と死亡した配偶者の姻族との関係が当然に終了するわけではなく、姻族関係を終了させる意思表示をした場合に終了することになります。
したがって、離婚をした場合には、配偶者の親族との間にあった親族関係は当然に終了するが、夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡した配偶者の親族との間にあった親族関係は、当然には終了しないのです。
オ 正
第818条
1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
第819条
1 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
第765条
1 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第739条第2項の規定及び第819条第1項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
第766条
1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
子は、婚姻中は父母の共同親権にあります(818条1項)。
しかし、父母の離婚により、どちらか一方の単独親権に移る場合もあります(819条1項)。
この場合、協議による親権が定まらないと離婚届を受理することができないため、協議による親権の定めは離婚届の条件となっています(765条1項)。
ただし、設問のように協議の上、家庭裁判所の許可を得て、第三者を親権者とすることを定めることができるとの規定はないので誤りとなります。
なお、親権者は、子の身の回りの世話をするための監護権と財産保護のための財産管理権の両方を有するのが通常です。
もっとも、子の福祉を考慮して場合によっては、身の回りの世話をするための監護権は母親に、財産管理権は父親にというように分離する必要があります。
そのため、離婚後の監護権者をどちらにするかについて協議し、協議が不調であれば、家庭裁判所の審判によって定めることになるのです(766条1項)。