民法 総則 (H26-27)
A、B、CおよびDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団体を設立した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。
1 X会が権利能力なき社団であり、Aがその代表者である場合、X会の資産として不動産があるときは、その不動産の公示方法として、Aは、A個人の名義で所有権の登記をすることができる。
2 X会が民法上の組合である場合、X会の取引上の債務については、X会の組合財産がその債務のための責任財産になるとともに、組合員であるA、B、CおよびDも、各自が損失分担の割合に応じて責任を負う。
3 X会が権利能力なき社団である場合、X会の取引上の債務については、その構成員全員に1個の債務として総有的に帰属し、X会の社団財産がその債務のための責任財産になるとともに、構成員であるA、B、CおよびDも各自が連帯して責任を負う。
4 X会が民法上の組合である場合、組合員であるA、B、CおよびDは、X会の組合財産につき持分権を有するが、X会が解散して清算が行われる前に組合財産の分割を求めることはできない。
5 X会が権利能力なき社団である場合、構成員であるA、B、CおよびDは、全員の同意をもって、総有の廃止その他X会の社団財産の処分に関する定めのなされない限り、X会の社団財産につき持分権を有さず、また、社団財産の分割を求めることができない。
解答 3
権利能力なき社団が総有であることを理解していれば、正解できたでしょう。テキストでは、共有、合有、総有の区別を詳細に解説してあるので間違えた人はしっかり復習しておいてください。
テキストP55~57、318、319、706~709
肢1 正 肢3 誤 肢5正
権利能力なき社団とは、社団としての実質を備えていながら法人格を付与されていない団体をいいます。
社団としての実質を備えているので、団体として独立性があり、社団法人に準じた扱いを受けます。
例えば、町内会やサークル、設立中の会社などが権利能力なき社団にあたります。
法人格が付与されていない以外は、その実体は、社団法人に類似するので、社団法人に関する民法の規定ができるだけ類推されているのです。
しかし、法人格が付与されていないので、社団自体には権利能力はありません。
そのため、権利義務の帰属主体たりえないことから、通常の法人と異なり、社団独自の財産を持ちえません。
そこで法律関係はすべて構成員に総有的に帰属すると考えられています。
よって、X会の社団財産がその債務のための責任財産にはなりえないので肢3は誤りです。
そして、総有は、最も団体主義的色彩が強いものです。
持分という概念そのものがないので、より結合関係が強くて独立性が弱いため、持分を処分するとか、分割請求するとかということもありえません。
そのため、構成員は、持分の処分や分割請求をすることはできないのです。
よって、肢5は正しいです。
このように、社団財産の帰属について、構成員に総有的に帰属すると解する以上、権利能力なき社団の債務も構成員に総有的に帰属するのです。
そして、権利能力がないため法人と異なり団体名義の登記はできません。
そのため、構成員全員の共有とする名義の登記か、あるいは代表者個人名義の登記のみが認められるのです。
よって、肢1は正しいです。
肢2 正 肢4 正
共有よりも、団体主義的な色彩が少し強くなるのが合有です。
具体的には、本肢のような組合財産などがその一例です。
このような持分のあり方を潜在的な持分といい、共有よりも結合関係が強く、独立性が弱いのです。
そのため、持分を処分をしても、第三者に対抗できないなど、処分に制限があり、また分割請求も制限されています(676条)。
第676条
1 組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。
2 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。
よって、肢4は正しいです。
なお、肢2は少し細かいところですので、条文だけみておきましょう。知らなくても本問の成否には関係がないといえます。
第674条
1 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
2 利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。よって、肢2は正しいです。