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民法 債権 (H26-33)


債権の準占有者に対する弁済等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはいくつあるか。


ア 他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。

イ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。

ウ 他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、債権の準占有者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。

エ 債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が債権の準占有者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。

オ 債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、債権の準占有者への弁済として有効な弁済となる。


1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ



解答 5


債権の準占有者に対する弁済等という今まで出題実績がないところであり、個数問題(特に肢ウ)なので間違えても仕方のない問題でしょう。

ただ、肢ア、イ、エ、オについては、合格ファームのテキストや演習問題では解説してありましたので正誤の判断ができて欲しかったところです。


テキストP543~548など


肢ア 正 肢イ 正  類似問題 演習問題6 肢3

本人と詐称する者や詐称代理人に弁済しても、その効果は本来の債権者本人に帰属しないので、その弁済は有効にならないのが原則です。

しかし、債権者のような外観(あるいは債権者の適法な代理人の外観)があって、その外観を善意・無過失で信じて弁済したのならば、そのような者を保護する方が公平なのです(478条)。

ですから、債権者のような外観(あるいは債権者の適法な代理人の外観)のある債権の準占有者に対して、弁済者が債権者(あるいは代理人)だと善意・無過失で信じて弁済した場合は、弁済者が保護されるのです。

なお、肢イにおいて、定期預金の期限前払戻しについて当事者間で期限前払戻しの場合における弁済の具体的内容が合意により確定している場合には、期限前払戻しは478条の弁済に当たると判示しています(最判昭41年10月4日)。

よって、肢アとイは正しいです。

肢ウ 正

(最判昭和48年3月27日)

「銀行が無記名預金について真実の預金者と異なる者を預金者と認定し、この者に対しその預金と相殺する予定のもと貸付けをし、その後相殺するときには、民法478条の類推適用がある」と判示している。

肢エ 正

本肢のように受取証書が偽造されたものである場合には、480条は適用されませんが、478条の準占有者として弁済を有効とすることができます。

なお、真正に成立した受取証書の持参人に対しては、弁済者をより保護すべきなので480条で弁済者が保護されています。

肢オ 正  類似問題 演習問題6 肢4

本肢のように、第一譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があれば、劣後していても他方の譲受人が正当な債権者であると思うのが通常なので、このような譲受人は、債権者らしい外観があり、債権の準占有者となるのです。

ですから、善意・無過失であるならば、弁済者を保護する必要があるのです。

よって、正しいです。






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