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商法・会社法 (H26-39)



株主総会の決議に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、妥当でないものはどれか。


1 取締役会設置会社の株主総会は、法令に規定される事項または定款に定められた事項に限って決議を行うことができる。

2 取締役会設置会社以外の会社の株主総会においては、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項以外についても、決議を行うことができる。

3 取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったとみなされる。

4 株主総会の決議取消しの訴えにおいて、株主総会の決議の方法に関する瑕疵が重大なものであっても、当該瑕疵が決議に影響を及ぼさなかったものと認められる場合には、裁判所は、請求を棄却することができる。

5 会社を被告とする株主総会の決議取消しの訴え、決議の無効確認の訴え、および決議の不存在確認の訴えにおいて、請求認容の判決が確定した場合には、その判決は、第三者に対しても効力を有する。



解答 4


株主総会の瑕疵についての基本的な問題ですので是非とも正解したいところです。


肢1 正  肢2 正

取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができ、株主の決議事項が限定されています(295 条2 項)。

第295条

1 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

2  前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

限定されているのは設置した取締役会自体に取締役を監視する役割があるので(362 条)、株主総会では、会社の存続に関わるような重大事項(合併など)などについて決議されるのです。よって、肢1は正しいです。

これに対して、非取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができるのです(295条1 項)。

したがって、取締役会設置会社以外の会社の株主総会においては、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項以外についても、決議を行うことができるのです。よって、肢2は正しいです。

なお、取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項(株主総会の目的である事項があるときは、当該事項)以外の事項については、決議をすることができない(309条5項)ものと比較しておきましょう。

肢3 正

第319条

取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

肢4 誤

決議取消しの訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、請求を棄却することができるとされています(831条2項)。

 形式的には、1号に違反する決議がなされた場合でも、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、決議を取消すことの影響の方が大きいため、法的安定性を保つために請求を棄却することになります。

肢5 正

決議不存在の訴えとは、決議が事実上または法律上存在しないような場合をいいます。

例えば、総会を開催した事実や決議をした事実が全くないのに、議事録の作成や登記だけなされているような場合、招集権限のない者によって総会が招集されたような場合、招集通知もれの程度が著しいような場合などがあります。

決議無効の訴えとは、決議の内容が法令に違反することを理由として訴えられるものです。

決議取消しの訴えと異なり、決議無効原因は決議の内容自体に法令違反があるなどの重大なものです。

例えば、株主平等原則違反の決議、株主有限責任違反の決議、違法な利益処分案を承認する決議などです。決議の瑕疵が重大であるため、会社の適正化の要請がより強く働きますから、法的安定性を欠いても、また会社の合理化の要請を後退させてでも、いつでも誰でもどの方法でも決議無効の主張ができるのです。逆に言うと、重大な原因でなければ、決議無効の主張を認めるわけにはいかないのです。行政法で勉強した無効確認訴訟の場合と同じ感じです。

 ですから、訴え提起しなくてもその決議は当然に無効となります。そのため、裁量棄却は観念できません。

決議無効の訴え及び決議不存在の訴えの場合の判決効については決議取消の訴えと同様に紛争当事者以外の第三者にも効力を及ぼす対世効となります。




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