行政法 行政手続法 (H10-50)
行政手続法における行政指導に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。この場合において、不利益な取扱いには、行政指導により求める作為又は不作為を行うことを奨励する制度を設けてこれに従った者に対して一定の助成を行うなどの措置をとるときに、従わなかった者がその助成を受けられないようなものも含まれる。
2 災害の発生に伴って緊急に避難するよう行政指導により口頭で勧告した場合において、その相手方から当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を記載した書面の交付を求められたとき、当該行政指導に携わる者は、これを交付しなくてもよい。
3 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
4 申請の取下げ又は変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならないが、当該行政指導には、申請書の記載事項の不備、必要な添付資料の不足等の申請の形式上の要件に適合していないことからその補正を求めるものは含まれない。
5 行政指導は、行政機関が、相手方に一定の作為又は不作為を行わせようとする行為であるということができるが、法律上の拘束力を有する手段によって求める内容を実現しようとするものではなく、あくまでも相手方の任意の協力を前提としている。
解答 1
1 誤
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない(32条2項)点は正しい。
しかし、行政指導に従った者に対して一定の助成という利益を与え、行政指導に従わない者にその利益を与えない措置をすることは、単に利益を得られるかどうかの話であって、仮に行政指導に従わずに利益を得られないとしても、行政指導前の状態と何も変わらないので、従わないことによって、不利益となるわけではない。
2 正
行政指導が口頭でされた場合でも、その相手方から行政指導の内容事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない(35条2項)
もっとも、災害の発生に伴って緊急に避難するよう行政指導により口頭で勧告した場合は、「相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの」にあたるので書面による交付をしなくてもよい(35条3項)。
3 正
36条の通り。複数人に対して同種の行政指導をする場合、個別に行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を示しても、他者と同じ内容かどうか不明確であり、第三者にとっても不透明なものとなる。それゆえ、行政指導の明確性、複数人間の公平性、第三者への透明性を確保するために行政指導の共通内容について、公表しなければならない。
4 正
33条の通り、申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
しかし、申請書の記載事項の不備など形式上の要件に適合していないことを理由に、その補正を求めることは、適切に申請に導く指導であるため、このような行政指導を継続しても申請者の権利の行使を妨げていることにはならない。
それゆえ、このような行政指導は、33条における「当該行政指導」には含まれない。
5 正
32条1項の通り。
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。