民法 総則 (H18-28)
民法上の住所に関する次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 住所が知れない場合において、居所を住所とみなすことはできない。
イ 日本に住所を有しない外国人は、日本における居所をその者の住所とみなすことはできない。
ウ ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。
エ 住所が複数ある場合には、本籍地を住所とみなす。
オ 住民票に記載されている住所と本籍地が異なる場合には、住民票に記載されている住所を民法上の住所とみなす。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
解答 1
肢ア・肢イ・肢オ 全て誤
例えば、不特定物であるビール1ダースを客が酒屋に注文したとしましょう。
この場合、酒屋のビール1ダースの弁済の提供の場所はわかりますか。
客である債権者の現在の住所(民法484条)なんですね。
これを持参債務の原則といいます。
ですから、酒屋は弁済の提供をするためには債権者たる客の現在の住所に行って、ビール1ダースを届けなければならないのです。
そうすると、もし、弁済の提供ができなければ、酒屋は履行遅滞になる可能性がでてきますから客の住所がどこかはとても重要なのですね。
では、住所が不明な場合、酒屋はどこに弁済の提供をすればいいのでしょうか。
住所というのは生活の本拠地ですから、住所がわからなくても債権者の居場所がわかれば、酒屋はビールを届けられますね。
ですから住所不明な場合は、債権者の居場所、つまり居所に弁済の提供をすればよいのです。
そうすると、住所が知れない場合において、居所を住所とみなすことができないならば、債務者は弁済の提供ができませんから、この場合、居所を住所とみなすのです(23条)。
よってアは誤りです。
また、日本に住所を有しない外国人であっても、売買などはしますから、居所をその者の住所とみなすのです。
よって、イは誤りです。
さらに、住所というのは生活の本拠地ですから、住民票に記載されている住所と本籍地が異なる場合、例えば、本籍地が生活の本拠地となっているのなら、本籍地が住所であって、本籍地で弁済の提供をしなければならないでしょう。よって、オは誤りです。
肢エ 誤
複数あろうが、住所として特定できるなら、そのうちの一つに弁済の提供をすればいいはずです。よって、エは誤りです。
ここまでは何とか肢が切れると思います。
そうすると、この問題は正しいものはいくつあるかですから、解答の選択肢にはゼロ解答がありませんので少なくとも一つは正しいわけです。
肢ウ 正
そうすると、ウは検討しなくても正しいと答えがでてしまいます。
結果的には条文どおりですのでそのまま押さえておいてください。
個数問題でありながら、全て解答を出さなくても正解がでる問題なのです。