商法・会社法 (H19-37)
株式買取請求権に関する次のア~オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア、単元未満株式を有する者は、投下資本の回収を保証するため、いつでも会社に対して単元未満株式の買取りを請求できる。
イ、議決権制限株式を発行する旨の定款変更決議に反対する株主は、株式買取請求権を行使することができる。
ウ、株主総会決議に反対する株主が買取請求権を行使するには、原則として、その決議に先立ち反対の旨を会社に通知し、かつ、その総会において反対しなければならない。
エ、株式の買取りを会社に対して請求した株主であっても、会社の承諾があれば、買取請求を撤回することができる。
オ、合併承認決議に反対する株主からの買取請求により支払った金額が分配可能額を超えた場合には、取締役はその超過額について責任を負う。
1.ア・ウ
2.ア・オ
3.イ・エ
4.イ・オ
5.ウ・エ
解答 4
ア 正
まず、アですが、この問題は、単元株の基本的な知識が必要です。
単元株とは、例えば、1単元株=1000株と定款で定めたとしましょう。
この場合、1000株持っていないと、議決権の行使などができない株の集合体をいいます。
イメージでいうと、1枚の絵になるためには、1000ピースのパズルを集めなければならないという感じです。
この場合、当事者において、1ピースだけで売り買いするのは難しいですよね。
つまり、単元未満株をもっていても、株式の譲渡で投下資本の回収をすることは難しいのです。
ですから、会社に買い取ってもらったほうが容易なわけです(192条)。
会社が仲介者となって、いつでもなるべく単元株になるような制度になっているのです。
そうすると、肢アは正しいですね。
これで、解答肢の1と2が切れます。
次に、肢イをみましょう。
イ 誤
文言に注意して欲しいのですが、「譲渡」制限株式ではなく、「議決権」制限株式を発行しようと定款変更の株主総会決議がなされたわけです。
この決議に反対する株主は、株式買取請求権を行使できるのでしょうか。
上記の通り、株式譲渡が困難なときに株式買取請求権が認められるのです。
議決権が制限されると、株式の譲渡が困難になるでしょうか。
株式は投資の対象となっているのは周知の事実ですね。
そうすると、議決権は要らないから、配当だけ欲しいという投資家は沢山いるわけです。
そういう投資家にしてみれば、議決権制限株式は、商品として魅力がありますから、市場で流通しそうですね。
企業にとっても、株主総会前に通知しなくてよくなりますから、このような株式を発行しておくことにコスト削減などのメリットがあります。
ですから、反対ならば、原則どおり、株式の譲渡で投下資本の回収をすればよいのです。
よって、イは誤りとなります。
これに対して、譲渡制限株式にするために定款を変更する場合は、投下資本の回収方法そのものが制限されるわけですから、反対株主の買取請求権が認められていますので注意してください。
これで、解答肢が3と4だけに絞られました。正解率50%です。
この問題は、初見ならば、ここまでできていればとりあえずOKです。肢エをみてみましょう。
エ 正
株式は、投資の対象ですから、株主によってはずるいことを考える者もいるのです。
つまり、いつでも買取請求を撤回できるとすると、株価が下落しそうだから買取請求したが、また株価が上向きになりそうになったら、撤回しようと投機の手段として利用される恐れがあるのです。
ですから、会社の承諾を経てはじめて買取請求を撤回することができるのです。
よって、肢エは正しいです。
これで解答肢としては、4が正解となります。
肢オをみてみましょう。
オ 誤
上記の通り、買取請求をした結果、自己株式の取得になりますから、払い戻しにより会社財産が全てなくなってしまわないように財源規制がかけられます。
それが会社債権者保護のため、分配可能額を超えて払い戻しをしてはならないとする規制です。
しかし、合併のような組織変更のような場合、別途会社債権者保護の手続きがなされます。
それゆえ、自己株式取得に対する債権者保護のための財源規制を課す必要がないのです。
そのため、取締役の責任もないのです。
よって、肢オは誤りです。
ウ 正
最後に肢ウですが、手続きですのでこのまま覚えてしまいましょう。
この問題は、難しいのでわかるところまで押さえてしまって後は余裕があればまた復習するという感じでいいと思います。
こういう問題にはまって復習に膨大な時間をかけると、他の科目の勉強時間を大幅に削ってしまい結果的に他の科目の勉強不足を招いてしまいますから、ほどほどの理解でとどめておくというのも戦略の一つだと思ってください。
試験中だけでなく普段の勉強の中でも、時間をかける科目の優先順位をつけてやる方が効率的です。