商法・会社法 (H19-39)
取締役会設置会社の代表取締役Aが、取締役会の承認を得て、会社から金銭の貸付を受けた場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 取締役会の承認を得て金銭の貸付を受けた場合であっても、Aは、事後にその貸付に関する重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
2 Aが自ら会社を代表してA自身を借主とする契約を締結することは、自己契約に当たるため、他の取締役が会社を代表しなければならない。
3 Aが金銭の返済を怠った場合には、取締役会で金銭の貸付を承認した他の取締役は、Aと連帯して会社に対する弁済責任を負う。
4 Aへの金銭貸付に関する承認決議に参加した他の取締役は、取締役会の議事録に当該貸付について異議をとどめなければ、決議に賛成したものと推定される。
5 金銭の貸付を受けたAの損害賠償責任は、株主総会の特別決議によっても一部免除することができない。
解答 2
1 正
取締役会の承認の有無に関わらず利益相反取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない(365条2項、356条1項2号)。
2 誤
他の取締役が会社を代表する必要は無い(356条1項2号、2項、365条1項)。
3 正
取締役の利益相反取引によって株式会社に損害が生じた場合、その承認決議に賛成した取締役は、その任務を怠ったものと推定されるため、その取締役と連帯して弁済する責任を負う(423条3 項3号、430条)。
4 正
「取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。」(369条5項)
5 正
役員等の任務を怠ったときの損害賠償責任は、株主総会の特別決議によって一部免除されることがあるが、自己のために直接取引をした取締役の損害賠償責任は、この対象にならない(会社法第428条2項、同法第425条1項)。