行政法 総論 (H19-8改題)
次の行政行為のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 電気事業法に基づいて経済産業大臣が行う電気事業の「許可」は許可である。
イ ガス事業法に基づいて経済産業大臣が一般ガス事業者に対して行う供給約款の「認可」は許可である
ウ 銀行法に基づいて内閣総理大臣が行う銀行どうしの合併の「認可」は特許である。
エ 建築基準法に基づいて建築主事が行う建築「確認」は公証である。
オ 農地法に基づいて農業委員会が行う農地の所有権移転の「許可」は許可である。
カ 風俗営業の「許可」は認可である。
キ 医師「免許」の付与は公証である。
ク 鉱業権設定の「許可」は特許である。
ケ 火薬類輸入の「許可」は認可である。
コ 選挙人名簿の「登録」は確認である。
解答 1つ
許可=禁止の解除、特許=個人ではできないような事業等、認可=法律行為というポイントで判断しましょう。
(肢ア) 誤
電気事業の「許可」は、上記のポイントからすると特許ですね。
(肢イ) 誤
「供給約款」とありますね。
「約款」というのは、簡単にいうと契約における特約事項のようなものです。
いずれにしても契約ですから、法律行為であって「認可」の定義にあてはまります。
よって、肢イは「認可」とされるのです。
(肢ウ) 誤
「合併」とありますね。
会社法はまだ勉強していませんが、合併も会社同士の契約です。
合併の手続きにおいて、まず合併契約を締結します(会社法748条)。
これも法律行為ですから、「認可」の定義にあてはまります。
よって、肢ウも「認可」とされるのです。
(肢エ) 誤
建築基準法に基づいて建築主事が行う建築「確認」は、文字通り確認です。
確認とは特定の事実や法律関係について、判断したり確定したりする行為をいいます。
建築物などの建築計画が建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかを着工前に審査して、建築確認がなされると着工できるようになります。これは文字通りなので覚えやすいですね。
(肢オ) 誤
「農地の所有権移転」ということから、これは売買契約等がなされたことがわかりますね。
農地という部分がわかりにくければ、単に土地の所有権移転と置き換えてみればよりわかりやすいと思います。
そうすると、契約=法律行為であって、「認可」の定義にあてはまります。
ですから、肢オは「認可」とされるのです。
(肢カ、キ、ケ) 誤
風俗営業の「許可」、医師「免許」の付与、火薬類輸入の「許可」は全て許可です。
上記の通り、どの行為も許可のポイントである許可=禁止の解除に合致していますね。
よって、どれも誤りです。
(肢ク) 正
鉱業権設定の「許可」は、少しわかりにくいかもしれません。
しかし、「鉱業」とあるので、鉄、銅、石炭、ダイアモンドや金などの地下資源の採掘事業であることはわかるのではないでしょうか。個人でできるような規模の事業ではないですね。
ですから、これは特許ということになります。
(肢コ) 誤
選挙人名簿の「登録」は公証です。
公証とは、特定の事実や法律関係の存在について、公的に証明する行為をいいます。
戸籍への記載、建築士の登録、行政書士の登録、証明書の交付などがあります。
これは意味がわかりやすいので大丈夫でしょう。
以上より、正しいのは、クのみですから一つです。
上記の許可、特許、認可の3つのポイントを押えておけば、具体例も覚えやすいですし、知らない事例が出てきてもその場で考えて何とか解けると思いますので参考にしてみてください。