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行政法 行政手続法 (H20-12)


行政手続法における申請拒否処分の取り扱いについての次の記述のうち、妥当なものはどれか。


1 申請拒否処分は、不利益処分の一種であるから、こうした処分にも、不利益処分に関する規定が適用される。

2 申請拒否処分についても、相手方の権利に重大な影響を及ぼす許認可等を拒否する場合などには、事前の聴聞が義務付けられている。

3 申請拒否処分の理由については、理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合には、処分後相当の期間内に示せば足りる。

4 公にされた標準処理期間を経過しても申請に応答がなされない場合には、申請拒否処分がなされたものとみなされる。

5 申請拒否処分が許されない場合において、それをなしうるとして申請の取下げを求める行政指導は、違法な行政指導である。


解答 5 


(肢1)

「申請拒否処分は、不利益処分の一種」という部分が誤りですね。

よって、肢1は誤りです。


(肢2)

申請に対する拒否処分≠不利益処分なので、意見陳述手続である聴聞手続は認められていません。関連問題1の肢2と同じ問題ですね。よって、肢2は誤りです。


(肢3)

「差し迫った必要がある場合」とは、不利益処分についての問題でしたね。

これも申請に対する拒否処分との混同をねらった問題です。よって、誤りです。

ちなみに、申請に対する拒否処分の場合も、同時に、当該処分の理由を示さなければならない点は、不利益処分と同様です。

ただし、①法令に定められた許認可等の要件②公にされた審査基準が数量的指標③その他の客観的指標、により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りると規定されています(8条1項)。

要するに、形式的な瑕疵が書類等から客観的に明らかな場合は、申請者の求めがないかぎり、理由を示さなくてもよいといっているのです。

形式的な瑕疵にすぎないので、拒否処分をすべき「差し迫った必要がある場合」というのはあてはまらないのです。

これらの3つの肢は、「申請に対する拒否処分≠不利益処分」ということだけ押えていれば正誤の判断が簡単につきますね。


(肢4)

行政手続法は、行政庁に向けられたものであり、国民の権利・自由を保障することが目的でしたね。

ですから、行政庁が標準処理期間を無視して何らの処分をしない場合、その不利益が自動的に国民の負担になるという考え方自体がおかしいですね。

標準処理期間の設定は努力義務であるとはいえ、設定した以上は公表義務があるので、行政庁は原則としてその期間を守るべきです。

また、その期間を経過したとしても、何らかの処分を現実的になされなければ、行政運営の公正と透明化を図ることはできないでしょう。

ですから、「申請拒否処分のみなし」はありえません。根本から考えれば正誤の判断がつくと思います。よって、誤りです。


(肢5)

34条を知っていればもちろん正解できますが、知らなくても、行政指導の根本に戻って考えれば正解はでるはずです。

行政指導は、相手方の任意の協力を得てなされるものでしたね。

ですから、行政側から申請拒否処分をすることができない場合に、申請の取下げを促すというのは、強迫に近い行為です。

行政指導の名を借りた強制的手段といえるので、任意とはいえず、違法な行政指導となります。

34条も参照しておいて下さい。

よって、正しいです。

34条「許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。」




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