行政法 行政手続法 (H20-13)
行政手続法における届出の取り扱いについての次のア~エの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 個別法上は届出の語が用いられていても、それが行政手続法上の届出に当たるとは限らない。
イ 法令に基づき、自己に対して何らかの利益を付与する行政庁の応答を求める行為は、行政手続法上の届出に含まれる。
ウ 届出書の記載事項に不備がある場合であっても、届出がなされた以上は届出義務は尽くされたことになる。
エ 地方公共団体の機関が、その固有の資格においてすべきこととされている届出には、行政手続法上の屈出に関する規定の適用はない。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 ア・エ
4 イ・ウ
5 イ・エ
解答 3
行政手続法の第1条1項から明らかなように、目的は、国民の権利利益の保護です。
そのための手段は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることです。そして、適用範囲は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続です。
本問は、このうちの届出について問われています。
届出とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう(行手法2条7号)。
上記行政手続法1条1項およびこの届出の定義からア、イ、ウの正誤の判断がつきます。
(ア)
上記の行政手続法上の届出の定義にあたらなければ、他の法律で届出の語が用いられていても行政手続法上の届出にならないのは当然ですね。
よって、正しいです。
なお、逆に「届出」の語が用いられてなくても、この定義にあてはまるものは届出に当たるといえるでしょう。
(イ)
法令に基づき、自己に対して何らかの利益を付与する行政庁の応答を求める行為は、行政手続法上の届出の定義にあたらず、むしろ申請の定義に該当するものです。行政手続法上の届出は、定義にあるように申請に該当するものを除くとされています。
ですから、届出にはあたりません。よって、誤りです。
(ウ)
行政手続法上の届出には、定義にあるように、法令により直接に当該通知が義務付けられているものです。そして、当該通知が義務付けられているといえる場合は、37条に規定されています。
申請の場合と同じように、従来行われてきた行政機関が届け出を受理しないこと(不受理)などを排除する趣旨です。
したがって、届出書の記載事項に不備がある場合には、届出義務が尽くされたことにならないのです。 よって、誤りです。
届出については、2条の定義と37条の義務について押さえておきましょう。これで、1と2が消去され、エを判断するまでもなく3が正解となりました。
(エ)
固有の資格において行政手続法が適用されないということは、国の機関または地方公共団体が一般私人と同様の立場ではないということです。
つまり、固有の資格とは、国の機関または地方公共団体であるからこそ立ち得る特別の立場を意味するのです。このような一般私人とは異なる特別な立場にある場合は、行政手続法の目的とは関係がなくなるので、適用除外となるのです。
例えば、地方競馬への中止命令は、地方公共団体という立場に対する処分なので、行政手続法の適用除外となるのです。
これに対して、市バスの事業免許などは、地方公共団体が、私人と同様の立場で処分を受けるので、行政手続法の適用対象となるのです。よって、正しいです。
以上より、アとエが正しく、正解は3です。
本問は、届出という過去問ではあまり頻出している分野ではありませんが、問われていることは極めて基本的なことなので、是非とも正解したい問題といえるでしょう。