商法・会社法 (H20-38)
株式会社における剰余金の配当に関する次のア~オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア 剰余金の配当により株主に交付される金銭等の帳簿価額の総額は、剰余金の配当が効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
イ 剰余金の配当においては、株主総会の決議により、当該会社の株式、新株予約権または社債を配当財産とすることができる。
ウ 取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り、取締役会決議により剰余金の配当(中間配当)をすることができる旨を定款で定めることができる。
エ 純資産の額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当をすることができない。
オ 会社が自己株式を有する場合には、株主とともに当該会社も剰余金の配当を受けることができるが、配当財産の額は利益準備金に計上しなければならない。
1 ア・ウ
2 ア・エ
3 イ・エ
4 イ・オ
5 ウ・オ
解答 4
(肢ア)
剰余金の配当とは、会社が事業で得た利益の株主への配当のことをいいます。株主が会社に出資し、その出資金を元に会社は事業をして利益を得ているので、その利益を実質的所有者である株主に分配しなければならないのです。剰余金の配当ができるためには利益があることが必要であって、利益がないのに配当するのは会社財産の基礎を減少させるので配当には一定の制限があります。それが分配可能額です。分配可能額の範囲内で剰余金の配当をしなければならないのです。この分野は少し細かくて覚えにくいので、まず分配可能額の範囲内で剰余金の配当をしなければならないというように大雑把に捉えましょう。
具体的には、剰余金の配当により株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、剰余金の配当がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならないのです(会社法第461条1項8号)。
よって、正しいです。
(肢イ)
剰余金の配当財産は金銭の他現物配当も認められます。例えば、子会社の株式などです。
しかし、当該株式会社の株式等(株式、新株予約権または社債)にすることはできません(454条1項1号)。株式、新株予約権については無償割り当ての制度が別にあるからです(185条・277条)。
このように現物配当の場合、換金方法の難易が株主により異なる場合があるので、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合は株主総会の特別決議が必要となります(309条2項10号)。
少し細かいので、まずは現物配当でも大丈夫ということを押えておきましょう。
よって、誤りです。
(肢ウ)
いわゆる中間配当についての問題です。取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当をすることができる旨を定款で定めることができます(454条5項)。
なお、この場合の配当は、取締役会の決議によるものなので配当財産が金銭のみに限られています。配当財産が金銭以外だと価値の算定が困難であるため株主の利益に多大な影響を与えるからです。
これに対して、株主総会の普通決議による剰余金の配当には回数制限がないことに注意しましょう。
(肢エ)
債権者保護の要請から株式会社の純資産の額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当が禁止されています(458条)。最低資本金制度が廃止されたとはいえ、純資産額があまりにも小さい場合は、計算上剰余金が生じたとしても配当できないことにしたのです。
よって、正しいです。
(肢オ)
保有している自己株式について、剰余金の配当を受けることは認められていません(308条2項、453条)。イメージでいうと、自分の家に保管してあるお金に勝手に利息がつくようなものですからおかしいですよね。よって、誤りです。