憲法 人権 (H20-4)
次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。
1 憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられている。
2 国は、子ども自身の利益のため、あるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるために、必要かつ相当な範囲で教育の内容について決定する権能を有する。
3 労働基本権に関する憲法上の規定は、国の責務を宣言するもので、個々の国民に直接に具体的権利を付与したものではなく、国の立法措置によってはじめて具体的権利が生じる。
4 労働基本権は、勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体が自己目的ではなく、国民全体の共同利益の見地からの制約を受ける。
5 憲法が義務教育を定めるのは、親が本来有している子女を教育する責務をまっとうさせる趣旨によるものであるから、義務教育に要する一切の費用を当然に国が負担しなければならないとは言えない。
解答 3
本問は、労働基本権の法的性質がわかっていれば、それだけで正解が出ます。
労働基本権は、社会的な弱者である被用者が使用者と対等な立場を保つために憲法が対国家のみならず私人間においても直接適用されることが予定されているので、28条を根拠に、国の立法・行政の不作為に対して裁判で違憲を争える具体的権利です。
労働基本権=具体的権利が出題意図であり、これがわかっていれば正解が3であると瞬時にわかるはずです。
肢1 正
多数の不確定要素を総合考量して初めて決定されるので、立法裁量が広い。
肢2 正
教育内容については、必要かつ相当と認められる範囲において国家が決定する。
肢3 誤
労働基本権は、具体的な立法が制定されなくても、28条を直接の根拠にして違憲性を裁判で争える具体的権利である。
肢4 正
労働基本権の保障も全く無制約ではなく、公共の福祉による制約を受ける。
肢5 正
義務教育においては、授業料が無償とされる。