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商法・会社法 (H21-36)


商人間の取引に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。


1 A株式会社は、輸入業者Bとの間で牛肉の売買契約を締結し、Aの仕入れ担当者が引渡しに立ち会った。4ヶ月後に、当該牛肉に狂牛病の可能性のある危険部位があることが分かったため、直ちにBに通知した。この場合に、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができる。

2 A株式会社は、輸入業者Bとの間でコーヒー豆の売買契約を締結した。Aの仕入れ担当者はコーヒー豆の納入に立ち会い、数量の確認および品質の検査を行った。その際、コーヒー豆の品質の劣化を認識していたが、Bに直ちには通知しなかった。この場合に、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができない。

3 A株式会社は、輸入業者Bとの間でチューリップの球根の売買契約を締結した。Aの仕入れ担当者が引渡しに立ち会ったところ、球根の種類が予定していたものと異なっていた。そこで、Aは直ちに売買契約の解除をBに通知した。Bの営業所が同一市内にあったため、Bが引き取りに来るまでの間、Aは球根を放置していたところ、発芽し、売り物には適さないものになったが、Aには責任はない。

4 A株式会社は、輸入業者Bとの間でバナナの売買契約を締結した。履行期日になったが、Aの加工工場でストライキが起こり、Aは期日にバナナを受領することができなかった。そこでBは、Aへの催告なしに、そのバナナを競売に付し、競売の代金をバナナの代金に充当したが、これについて、Bに責任はない。

5 A株式会社は、輸入業者Bとの間でクリスマス商品の売買契約を締結したが、輸出国の工場での製造工程にトラブルが生じ、商品の製造が遅れたため、納入がクリスマスに間に合わなかった。Aが、Bに対して契約の解除等何らの意向を示さずに、Bからの度重なる連絡を無視し続けた場合、クリスマス商品の受領を拒むことはできない。



解答 5


商人間の売買(524条~527条)については、売主の保護というのが大事な視点となっています。

 この視点に注意して勉強するようにしてください。


1 正

民法570条の瑕疵担保責任で考えると、Aは、Bに対して、その事実を知った時から1年以内に契約の解除又は損害賠償の請求することができます。

ところが大量かつ迅速に行われる商取引における瑕疵担保責任については、買主側が直ちに検査し、瑕疵が6ヶ月以内に発見された場合、直ちに売主に対して通知しなければ、瑕疵担保責任を問えないのです(商法526条)。

早期に瑕疵を知ることができれば、売主は瑕疵のない物に取り替えるなどの対処をすることができるため、売主保護のために買主側に検査および通知義務を課しているのです。

(買主による目的物の検査及び通知)

第526条

1 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。

2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が六箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。

3 前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。

したがって、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができるのです。

なお、解除や損害賠償請求の他に代金減額請求もすることができる点も異なります。


2 正

上記の通り、検査のみならず通知義務を買主側に課しています。

Aはコーヒー豆の数量の確認および品質の検査を遅延なく行っていますが、その品質の劣化を認識していながら、Bに直ちに通知をしていません。

したがって、AはBに対して売買契約の解除、代金の減額または損害賠償を請求することができないのです。


3 正

商人間売買における買主による目的物の検査及び通知によって、買主が、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければなりません(商法第527条1項本文)。

買主が解除した場合、売主は別の転売先等の対処をするため、売主を保護するために、売主の指示があるまでは商品の保管・供託義務があるのです。

ただし、売主が悪意の場合や売主及び買主の営業所が同一の市町村の区域内にある場合には、その限りではないとされています(商法第527条4項)。

悪意の売主を保護する必要はなく、また売主及び買主の営業所が同一の市町村の区域内にある場合には売主に対して直ぐに商品を返却することができるからです。

したがって、例え、球根が発芽し、売り物には適さなくなっても、AとBは営業所が同一市内にあるので、Aには保管義務はなく、通知しても引き取りに来なかったBの責任であるから、Aには責任はないのです。

(買主による目的物の保管及び供託)

第527条

1 前条第一項に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない。ただし、その物について滅失又は損傷のおそれがあるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければならない。

2 前項ただし書の許可に係る事件は、同項の売買の目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

3 第一項の規定により買主が売買の目的物を競売に付したときは、遅滞なく、売主に対してその旨の通知を発しなければならない。

4 前三項の規定は、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にある場合には、適用しない。


4 正

(売主による目的物の供託及び競売)

第524条

1 商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。

2 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。

3 前二項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができます(商法第524条1項)。

民法においても、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託することができます。

(供託)

第494条

債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

(供託の方法)

第495条

1 前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。

2 供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。

3 前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。

供託において、民法と商法との違いは、供託通知が到達主義(民97条1項)か発信主義かという部分です。

つまり、商法においては、売主が買主に通知を発しさえすれば、供託できるのです。

 商法上は、競売の場合、売主は、相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができます。

また、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、催告をしないで競売に付することができます(商法第524条2項)。

さらに、代価を供託せずに代金に充当することもできます。

いずれにしても売主の保護のためです。

したがって、Bは、Aへの催告なしに、そのバナナを競売に付し、競売の代金をバナナの代金に充当することができるのです。

これに対して民法においては、競売できる場合は供託できないなどの場合に限定されています。

しかも裁判所の許可が必要であり、競売代金を充当することはできません。比較して押さえておきましょう。

(供託に適しない物等)

第497条

 弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも、同様とする。


5 誤

(定期売買の履行遅滞による解除)

第525条

 商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。

商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなされます(商法第525条)。

民法における定期行為においては、相手方が催告せずに解除することができるにとどまり、当然に解除したものとみなされるわけではありません(民542条)。この民法の原則を貫くと、相手方は解除されるかどうかわからないという不安定な状態におかれるので迅速な商取引の安全が図れないのです。

したがって、納入がクリスマスに間に合わなかった時点で、Aが、Bに対して契約の解除等何らの意向を示さなくとも、契約は解除したものとみなされているため、その後のBからの連絡やそれを無視したかどうかにかかわらず、クリスマス商品の受領を拒むことができるのです。




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