商法・会社法 (H21-38)
株主名簿に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。
ア すべての株式会社は、株主名簿を作成して、株主の氏名または名称および住所ならびに当該株主の有する株式の種類および数などを記載または記録しなければならない。
イ 基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主として記載または記録されていない者について、会社は、その者を株主として扱い、権利の行使を認容することができる。
ウ 株券発行会社においては、株式の譲受人は、株主名簿の名義書換えをしなければ、当該会社および第三者に対して株式の取得を対抗できない。
エ 会社が株主による株主名簿の名義書換え請求を不当に拒絶した場合には、当該株主は、会社に対して、損害賠償を請求することができるが、株主であることを主張することはできない。
オ 会社が株主に対してする通知または催告は、株主名簿に記載または記録された株主の住所または株主が別に通知した場所もしくは連絡先に宛てて発すれば足り、当該通知または催告は、それが通常到達すべきであった時に、到達したものとみなされる。
1.ア・イ
2.ア・オ
3.イ・ウ
4.ウ・エ
5.エ・オ
解答 4
ア 正
株式会社は、株主名簿を作成し、株主名簿記載事項(株主の氏名又は名称及び住所、その有する株式の数、その取得日、株券発行会社の場合はその株券番号)を記載し、又は記録しなければならない(会社法第121条)。
イ 正
株主名簿への記載を会社への対抗要件としているのは(会社法第130条)、事務処理上の便宜のためであるから、会社がその者を株主として扱い、権利の行使を認めることはできる。
ウ 誤
株券発行会社において、当事者間では、当事者の株式を譲渡するという意思表示と、株券の交付があれば効力が生じます(会社法128条)。
第128条
株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。
しかし、会社との関係では、株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ会社に対抗することができません(会社法130条1項)。
株券発行会社において、130条2項で第三者が除外されているのは株券という目に見えるものが譲渡されることで、株券の交付で第三者に対抗できるからです。
エ 誤
株主名簿の制度は、会社と株主との間の集団的法律関係を画一的に処理するために認められたもので、会社側の事務処理上の便宜のためです。
そのため、会社側が不当拒絶をしているのにもかかわらず、名義書換請求者は、名義書換なしに自分が株主であることを主張できないとするのは、信義則上許されません。
したがって、会社不当拒絶した場合、名義書換請求者は、名義書換なしに自分が株主であることを主張できるのです(判例)。
オ 正
第126条の通りです。
「1 株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
2 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。」