行政法 行政不服審査法 (H22-14改題)
行政不服審査法に基づく審査請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 審査請求は、他の法律または条例において書面でしなければならない定めがある場合を除き、口頭ですることができる。
2 審査請求は、代理人によってもすることができるが、その場合は、不服申立人が民法上の制限行為能力者である場合に限られる。
3 代理人は、不服申立人のために、当該不服申立てに関する一切の行為をすることができるが、審査請求の取下げについては特別の委任を要する。
4 処分について不服申立適格を有するのは、処分の相手方に限られ、それ以外の第三者は、法律に特別の定めがない限り、不服申立適格を有しない。
5 行政不服審査法に基づく審査請求は、行政庁の処分の他、同法が列挙する一定の行政指導についても行うことができる。
解答 3
テキストP178~183
肢1 誤
審査請求をするためには、不服申立書の提出が必要であり、書面主義が原則です(19条1項)。
申立人から提出された書面や添付された資料を証拠として審理するので早いのです。
ただし、法律または条例に基づいて口頭でできる旨を定めた場合は、例外的に口頭でも審査請求をすることができます。
本肢は、原則と例外が入れ代わっているので誤りとなります。
肢2 誤
当事者自身が審査請求をすべきなのは当然です。
しかし、行政不服審査法の手続は素人には複雑なので、訴訟と同様に専門家に任せたい場合もあります。
そのため、専門家を代理人として審査請求をすることができるのです(12条1項)。
このように、代理人の選任は、円滑な行政不服審査手続の進行を図ることにもあるため、選出制限はなされていません。
したがって、不服申立人が民法上の制限行為能力者である場合に限られるわけではありません。肢3 正
代理人による審査請求の取下げは、本人にとって不利益となる行為です。ですから、自由勝手に審査請求の取下げができないように本人による特別な委任が必要なのです(12条2項)。
肢4 誤
本問は不服申立適格つまり当事者適格のことを聞いています。
当事者適格とは、当事者能力があることを前提に、特定の争訟において当事者として承認される具体的な地位ないし資格をいいます。
違法・不当な処分を取消すことによって、侵害された自己の権利利益の回復が得られる者、つまり審査請求の利益を有する者だけが審査請求をすることができるのです。
このような利益を法律上の利益といい、法律上の利益を有する者でなければ審査請求をすることができないのです。
例えば、不利益処分を受けた者は、原則として当事者適格を有します。
これにより、審査請求をすることができる主体が絞られることになりますね。
もっとも、法律上の利益を有する者であれば、不利益処分を受けた者以外の者も当事者適格を有することもあります。
行政事件訴訟法9条2項と同様に、法律上の利益を有する者かどうかは、要するに、根拠法令の趣旨・目的のみならず、目的を共通する関係法令の趣旨・目的等をも参酌して判断するのです。
例えば、A法があって、A法の趣旨や目的だけでは、原告適格があるかどうかわからなくても、目的を共通にするB法の趣旨・目的等をも参酌すれば、原告適格を認めてもよいということです。
行政事件訴訟法9条の原告適格と同様に法律上の利益を有する者であれば、不利益処分を受けた者以外の者も当事者適格を有するということを押さえておきましょう。
肢5 誤
行政不服審査法の客体的要件、つまり審査対象は処分または不作為です。
行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいいますから、行政不服審査法の対象にはなりません。