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行政法 国家賠償法 (H22-20)


道路の設置管理に関する国家賠償についての次の記述のうち、判例に照らし、妥当なものはどれか。


1 国家賠償の対象となるのは、道路の利用者の被害に限られ、沿道住民の騒音被害とについては、道路管理者は、賠償責任を負わない。

2 土砂崩れによる被害を防止するために多額の費用を要し、それについての予算措置が困難である場合は、道路管理者は、こうした被害についての賠償責任を免れる。

3 道路上に放置された故障車に追突して損害を被った者がいたとしても、道路自体に暇疵があったわけではないから、道路管理者が賠償責任を負うことはない。

4 ガードレールの上に腰掛けるなどの通常の用法に即しない行動の結果生じた損害についても、道路管理者は、賠償責任を負う。

5 道路の欠陥を原因とする事故による被害についても、道路管理者は、それを原状に戻すことが時問的に不可能であった場合には、賠償責任を負わない。



解答 5 


1 誤

騒音や大気汚染などは、それ自体が営造物の物理的な瑕疵ではなく、営造物を使用したことから生じているので、これらを機能的瑕疵といいます。

こうした機能的な瑕疵による損害については、当該営造物の利用者に限られず、当該営造物の存在に起因してその周辺居住者等に被害が及ぶ場合には、その被害者もまた損害賠償を請求することができるとするのが判例です。

 ですから、国家賠償の対象となるのは、道路の利用者の被害に限られず、沿道住民の騒音被害についても道路管理者は、賠償責任を負うのです。


2 誤

国家賠償法2条は、公の営造物の設置・管理の瑕疵による損害について国が責任を負うことを確認しつつ、被害者保護の観点から民法の工作物責任より広く責任が認められるようにしたものです。

公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。

そして、この場合の国等の責任は、民法の工作物における所有者の責任と同様に無過失責任です。

無過失責任である以上、土砂崩れによる被害の防止に対する予算措置が困難であるからといって、道路管理者が、被害の防止の対策をしなければ公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることになるので、こうした被害についての賠償責任を免れることはないのです。


3 誤

<最判昭和50年7月25日>

『道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努める義務を負うところ、道路中央線付近に故障した大型貨物自動車が八七時間にわたって放置され、道路の安全性を保持するために必要とされる措置を全く講じていなかったことは、本件事故発生当時、同出張所の道路管理に瑕疵があったというほかなく、してみると、本件道路の管理費用を負担すべき国または公共団体は、国家賠償法二条及び三条の規定に基づき、本件事故によって被害者らの被った損害を賠償する責に任ずべきである。』

 この判例からすると、公務員以外の第三者の行為により営造物が瑕疵ある状態になった場合にも、その状態を速やかに改善して瑕疵のない状態に回復させる責任が営造物管理者である国または公共団体にはあるのです。

したがって、道路上に放置された故障車に追突して損害を被った者がいた場合、道路管理者が賠償責任を負う場合があるのです。


4 誤

次の肢の不可抗力の場合ではなくても、通常予測し得ない異常な用法で営造物を利用したために損害が発生した場合も賠償責任は否定されるのです。これを用法逸脱の場合といいます。テキストの判例も押さえておいて下さい。


5 正

国家賠償責任が無過失責任であるからといって、地震や洪水などの天災による事故や営造物の設置管理者に損害を回避する措置をとるための余裕がなかったような不可抗力の場合にも国等が賠償責任を負うのは、国民の税金を使用する点からしてもいきすぎです。

ですから、不可抗力による損害については、国又は公共団体は損害賠償の責任は負わないのです。したがって、本問について、道路管理者は、それを原状に戻すことが時問的に不可能であったのであるから、不可抗力による損害にあたるので賠償責任を負わないのです。





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