商法・会社法 (H22-39)
持分会社に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 持分会社の無限責任社員は、株式会社の株主とは異なり、金銭出資や現物出資にかぎらず、労務出資や信用出資の方法が認められている。
2 持分会社の社員の持分は、株式会社の株式とは異なり、一人一持分であって、細分化されたものではなく、内容が均一化されたものでもない。
3 持分会社は、会社法上の公開会社である株式会社とは異なり、原則として、社員各自が当該会社の業務を執行し、当該会社を代表する。
4 持分会社の社員は、株式会社の株主とは異なり、退社による持分の払戻しが認められているが、当該社員の責任を明確にするために、登記によって退社の効力が生じる。
5 持分会社が会社成立後に定款を変更するには、株式会社の場合とは異なり、原則として、総社員の同意を必要とする。
解答 4
1 正
持分会社の無限責任社員というと、合同会社は有限責任社員のみの会社なので含まれません。
そうすると、無限責任社員のみの合名会社および一部無限責任社員もいる合資会社であり、いわゆる人的会社です。
人的会社においては、社員が直接無限責任を負う場合、会社財産の確保は不要です。
そのため、出資は、金銭や現物出資の他、信用出資や労務出資も認められます(会社法第576条1項6号)。
なお、合資会社における有限責任社員は、金銭等のみの出資しか出来ない点に注意してください。
2 正
持分会社では、出資者である社員と会社との結合が強いため、所有と経営が分離しておらず、機関が分化していません。
そのため、各社員が会社の業務執行にあたることが原則とされ、その業務執行の意思決定は、原則として社員一人につき一票による多数決で行われます(590条2項)。
ですから、社員の持分は、一人一持分です。
これに対して、株式会社は、ある程度大規模経営を予定しているので、事業に必要な巨額の資金を調達する際に、資本を細分化し、少額の出資を多数の出資者から募ることが必要です。そのため、株式は均一的な細分化された割合的な構成単位をとっています。
そのため、一株につき一議決権が与えられているのです。
3 正
持分会社では、出資者である社員と会社との結合が強いため、所有と経営が分離しておらず、機関が分化していません。
そのため、各社員が会社の業務執行にあたることが原則とされ、業務執行社員は、原則として持分会社を代表します(599条)。
4 誤
持分会社では、出資者である社員と会社との結合が強いため、原則として持分の譲渡をすることができず、持分の払い戻しである退社制度を採用しています(611条)。
任意退社の場合、退社の効力は事業年度の終了の時に生じます。また、法定退社の場合、一定の退社事由が生じた時に生じます。
(任意退社)
第606条
1 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
(法定退社)
第607条
1 社員は、前条、第六百九条第一項、第六百四十二条第二項及び第八百四十五条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
2 持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。
5 正
持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができます(会社法第637条)。