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基礎法学 (H23-1) 


わが国の法律に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。


1 わが国の法律は基本的には属人主義をとっており、法律によって日本国民以外の者に権利を付与することはできない。

2 限時法とは、特定の事態に対応するために制定され、その事態が収束した場合には失効するものをいう。

3 法律が発効するためには、公布がされていることと施行期日が到来していることとの双方が要件となる。

4 国法は全国一律の規制を行うものであり、地域の特性に鑑み特別の地域に限って規制を行ったり、規制の特例措置をとったりすることは許されない。

5 日本国憲法は遡及処罰の禁止を定めており、法律の廃止に当たって廃止前の違法行為に対し罰則の適用を継続する旨の規定をおくことは許されない。



解答 3 


過去問で類似問題が出題されている以上、是非とも正解しておきたい問題です。なお、肢1、2、5は、基礎法学問題・解説問題1・参考過去問1の詳細解説で全て正誤を判断できます。肢4は憲法第95条の解説で正誤を判断できます。


1 誤

問題1の肢1で解説した通りです。わが国では、いわゆる属地主義が原則的に採用されています(刑法第1条1項など)。平たく言いますと、属地主義というのは、日本国内で起きた問題は、日本国内で解決するという意味です。

国によって、歴史や文化、宗教や政治的思想も全て異なるので、そういうものを背景として成立する法律もまた国によって異なります。ですから、日本の法律は、日本に属している領地=属地でのみ適用されるのです。


2 誤 5 誤

問題1の肢4で解説したとおりです。法律の有効期間が決まっている法律を限時法といいます。よって、肢2は誤りです。

なお、法令の有効期間が、限定されている限時法においては、罰則規定も失効するので、失効直前の行為を処罰することは事実上困難です。

例えば、平成21年12月31日までの有効期間である刑罰を定める法律があったとしましょう。そうすると、簡易な犯罪でなければ2・3ヶ月くらいでは裁判が終わらないことが通常ですから、その時期に法律違反をしても処罰されないので有効期間の3ヶ月くらい前から、その法律を無視して違反する行為が増えてきます。

これでは、犯罪の重さによっては、実質的にその法の罰則規定の有効期間が3ヶ月以上短縮されることになり、それを防止するため、判例において、特別の規定がなくとも失効後にも処罰できる場合があるとされています。

このような場合、経過規定がおかれることが多いのです。つまり、「なお従前の例による」として、法律が失効した後に刑罰が確定した場合であっても、従前と同じように処罰するという経過規定をいれているのが通常なのです。そうでなければ、有効期間が近づくにつれて犯罪が増えるからです。


4 誤

 憲法第95条で勉強したように、地方自治特別法というものを制定することができます。地方自治特別法とは、特定の地方公共団体の組織・権能・運営に関する基本的事項について、一般の地方公共団体と異なった取扱をする法律をいいます。

国会単独立法のところでも解説しましたが、地方自治特別法は、その例外です。

全国民を対象とするのではなく、ある特定の地方公共団体だけに適用される法律を制定する場合は、その住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、制定することができないというものです。

したがって、地域の特性に鑑み特別の地域に限って規制を行ったり、規制の特例措置をとったりすることも許されるのです。


3 正

 憲法で勉強したように法律は国会で制定され、天皇の公布によって国民に公示され、施行によってその法律の効力が生じ、実際に適用されるようになるのです。

したがって、法律が発効するためには、公布がされていることと施行期日が到来していることとの双方が要件となるのです。





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