基礎法学 (H24-2)
次に掲げる条文は、いずれも「みなす」の文言が含まれているが、正しい法律の条文においては「みなす」ではなく「推定する」の文言が用いられているものが一つだけある。それはどれか。
1 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。(民法753条)
2 移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。(民事訴訟法22条3項)
3 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書とみなす。(民事訴訟法228条2項)
4 自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪(刑法第三十六章の窃盗及び強盗の罪のこと。)については、他人の財物とみなす。(刑法242条)
5 試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。(行政書士法4条の7第3項〔一部省略〕)
解答 3
「みなす」とは、例えば、本来Aと性質を異にするBについて、一定の場合に限り、Aと同一視することであり、「Aでない」という反証を許さない点において、反証で覆せる「推定する」と異なります。
このように、反証を許さないのが、「みなす」であり、反証で覆せるのが「推定する」なのです。
本問のうち、反証で覆せる「推定する」となるのは肢3です。
もし、「公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書とみなす。」のであれば、たとえ公務員が虚偽の公文書を作成しても、全て真正に成立した公文書と擬制されるため、国家(公務員)と争っても一般私人が勝訴することが困難となります。そのため、「公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定される。」と規定されているのです。
なお、公務員が行使の目的で虚偽の公文書を作成すると、虚偽公文書作成罪(刑法156条)となります。虚偽公文書作成罪とは,文書の作成権限のある公務員が,その職務に関し,行使の目的で,虚偽の文書・図画を作成し,または,文書・図画を変造するという犯罪です。
他の肢はすべて「みなす」規定なので本問を機に押えておいてください。