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民法 身分法(H24-35) 


Aは2010年10月1日に死亡したが、Aには、Dに対する遺贈以外の遺言はなく、その死亡時に妻B、長男C、長女Dおよび次男Eがいた。この場合についての次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。


ア Bが2010年10月1日にAの死亡を知った場合において、Bは、その時から3ヶ月以内に単独で限定承認をすることができ、相続人全員で共同してする必要はない。

イ Cの相続権が侵害された場合に、CがAの死亡の時から5年以内に相続回復請求権を行使しないときは、同請求権は、時効によって消滅する。

ウ DがAから遺贈を受けた場合には、Aが死亡の時において有した財産の価額に遺贈の価額を加えたものを相続財産とみなし、Dの法定相続分の中からその遺贈の価額を控除した残額をもってDの相続分とする。

エ Eが、生前Aに対して虐待をし、またはAに重大な侮辱を加えた場合には、Eは、欠格者として相続人となることができない。

オ Aの死亡の時から5年以内にB、C、D、Eの協議により遺産分割がなされない場合には、B、C、D、Eは、全員で家庭裁判所に対し遺産分割を申し立てなければならない。


1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

5 五つ


解答 5


肢ア 誤

限定承認は相続人全員でしなければならない。

限定承認は相続があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に限定承認申述書により申述する。


肢イ 誤

相続回復請求権からの出題です。

第884条

 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。


真正相続人の相続権の保護と、法律関係の安定とのバランスを図るために、相続権侵害の事実を知った時から5年という時効期間を設け、相続開始時から20年という除斥期間を定めた(884条)。

あくまでも「相続権侵害の事実を知った時から」なので、相続開始の事実のみならず、自己が真正相続人であることを知り、それにもかかわらず相続から除外されていることを知った時から起算される。


肢ウ  誤

被相続人の生存中または遺言によって、例えば、被相続人から商売の資金援助、マイホーム資金など特別の援助を受けた場合、このような生前贈与や遺贈を特別受益といい、これを受けた相続人を特別受益者と言う。

この特別受益を考慮に入れずに、相続分を計算するのは、特別の援助を受けていない他の相続人との関係で不公平になる。

そのため、生前贈与の場合の特別受益は、「最初に足して後で引く」、これに対して、遺贈の場合は、相続開始の財産に含まれているので最初に足す必要はなく、「後で引くだけ」である。

  本問の計算方法は、生前贈与の場合である。


肢エ 誤

 本問の記述は、相続人の廃除(892条)の要件についてのものです。

(推定相続人の廃除)

第892条

 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。


推定相続人の廃除とは、被相続人自らの請求に基づいて、家庭裁判所がその者の相続権を剥奪する制度である。

相続欠格事由ほど悪質ではないために、法律上当然に相続人から廃除されるのではなく、被相続人の請求により家庭裁判所の審判によって廃除される。

これに対して、相続欠格とは、被相続人の生命等に対して故意に違法な侵害をした相続人が、その行為に対する民事上の制裁として、法律上当然に相続人たる資格を奪われる制度である。


(相続人の欠格事由)

第891条

 次に掲げる者は、相続人となることができない。

1.故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

2.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

3.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

4.詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者


肢オ 誤

遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる(907条2項)のであって、相続人全員で家庭裁判所に対し遺産分割を申し立てなければならないわけではない。


(遺産の分割の協議又は審判等)

第907条

1 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。




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