憲法 統治 (H24-4)
次の記述のうち、憲法の規定に照らし、正しいものはどれか。
1 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。
2 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、開会後直ちにこれを釈放しなければならない。
3 両議院の議員は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
4 国務大臣は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
5 国務大臣は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、問責決議によらなければ罷免されない。
解答 1
出題形式は、一肢選択問題です。
単純な条文知識問題ですので、是非とも正解したいところです。ただし、国会議員と裁判官、国会議員と国務大臣との比較が問われていますので、条文を正確に押さえておかなければならない問題です。間違えた方は、統治の問題は、条文知識の正確性が問われることを肝に銘じておきましょう。
1 正
憲法第75条そのままの問題です。
憲法第75条
「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。」
2 誤
憲法第50条の一部を変えた問題です。
憲法第50条
「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」
「開会後直ちに」の部分が誤りで、「その議院の要求があれば」が正しいです。
3 誤
国会議員の歳費(憲法第49条)と裁判官の報酬(憲法第79条6項、80条2項)との混同を狙った問題です。
憲法第49条
「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。」
憲法第79条6項
「最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」
憲法第80条2項
「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」
上記からわかるとおり、国会議員には、裁判官のような減額規制はありません。
4 誤
国務大臣と国会議員との混同を狙った問題です。
憲法第50条
「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」
国会議員は、国民から選挙で選ばれた代表者であるため、選挙民の意思を反映するためにも議員に自由な言論をできるだけ保障する必要があるのです。これに対して、国務大臣には、選挙で選ばれていない民間人も含まれるのでその趣旨が妥当せず、このような特権は認められないのです。
5 誤
国会議員の罷免事由(憲法第68条2項)と裁判官の罷免事由(憲法第78条)との混同を狙った問題です。
憲法第68条2項
「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」
憲法第78条
「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。」
上記のとおり、裁判官の場合のようになんら限定がなく、内閣総理大臣は任意に国務大臣を罷免できるのです。