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行政法 地方自治法 (H25-21) 


地方自治法の規定による住民監査請求と事務監査請求の相違について、妥当な記述はどれか。


1 住民監査請求をすることができる者は、当該地方公共団体の住民のみに限られているが、事務監査請求については、当該事務の執行に特別の利害関係を有する者であれば、当該地方公共団体の住民以外でもすることができることとされている。

2 住民監査請求については、対象となる行為があった日または終わった日から一定期間を経過したときは、正当な理由がある場合を除き、これをすることができないこととされているが、事務監査請求については、このような請求期間の制限はない。

3 住民監査請求の対象となるのは、いわゆる財務会計上の行為または怠る事実であるとされているが、こうした行為または怠る事実は、事務監査請求の対象となる当該地方公共団体の事務から除外されている。

4 住民監査請求においては、その請求方式は、当該行為の一部または全部の差止の請求などの4種類に限定されており、それ以外の請求方式は認められていないが、事務監査請求については、このような請求方式の制限はない。

5 住民監査請求においては、監査の結果に不服のある請求者は、住民訴訟を提起することができることとされているが、事務監査請求においては、監査の結果に不服のある請求者は、監査結果の取消しの訴えを提起できることとされている。



解答 2 


肢1 誤

過去問(H19-25-ア)と類似問題です。

住民監査請求と事務監査請求のどちらも住民が請求するものです。

地方公共団体の監査については、基本的には専門家である監査委員に任せてあります。

ですから、まずは監査委員の判断を聞いて、その上で、監査委員の判断に納得できないときに、住民訴訟を提起して第三者たる裁判所に判断を委ねるのです。

住民訴訟をするためには、直ちに訴訟を提起することはできず、その前提として、まず住民監査請求(242条)をしなければならないのが原則です。

審査請求前置主義とよく似ていますね。

これを住民監査請求前置主義ともいいます。

第242条

1 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。

事務監査請求は、直接請求の一つです。直接請求は、地方公共団体の住民がイニシアチブをとる請求です。

地方公共団体には行政事務を監視するために監査委員が置かれていますが、監査委員だけに任せてはおけないので、住民自らが行政事務について監視する必要があります。そこで、住民は監査委員に対して、事務監査請求をすることができるのです。

12条2項

日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有する。

肢2 正

審査請求と同様に、住民監査請求にも法律関係の早期安定のために出訴期間の制限が定められています。

住民監査請求は、「当該行為のあつた日又は終わった日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない(242条2項)。」

これに対して、事務監査請求には、このような制限はありません。

いつでも住民自らが行政事務について監視することができるようにしておく必要があるからです。

肢3 誤

過去問(H21-24-2)と類似問題です。

住民監査請求の対象となるのは、長などの違法・不当公金支出等の財務会計上の行為または怠る事実に対象が限定されています(地方自治法第242条の2第1項)。

住民訴訟を提起することを念頭に入れて長などの違法・不当な行為を是正するための請求だからです。

これに対して、事務監査請求には、このような制限はありません。

事務監査請求は、直接請求の一つであり、普通地方公共団体の事務の執行に関して監査の請求がなされた場合、当該事項について行う監査です。

ですから、事務の執行について制限なく監査ができるのです。

地方自治は、住民が主役であり、住民が地方の政治を監視・監督できるようにしてあるのです。

肢4 誤

過去問(H21-24-4)と類似問題です。

法定された4類型に限定されているのは、住民訴訟であって、住民監査請求ではありません。

住民訴訟は以下の4種類あります。

①差止訴訟(1号)

②取消訴訟および無効確認訴訟(2号)

③不作為の違法確認訴訟(3号)

④損害賠償請求・不当利得返還請求訴訟(4号)

なお、住民監査請求も、事務監査請求も、監査以外の行為を請求することはできないので、請求方式に何ら制限がないというのも誤りです。

肢5 誤

住民監査請求においては、監査の結果に不服のある請求者は、住民訴訟を提起することができるという点は正しいです(地方自治法第242条の2第1項)。

これに対して、事務監査請求では、その監査の結果に不服があっても、その後の不服に関する手続は何ら用意されていないため、事務監査の結果に不服があっても請求者は、監査結果の取消しの訴えを提起できるわけではありません。





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