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商法・会社法 (H25-37)


取締役会設置会社が、その発行する全部の株式の内容として、譲渡による株式の取得について当該会社の承認を要する旨を定める場合(以下、譲渡制限とはこの場合をいう。)に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。


ア 会社が譲渡制限をしようとするときは、株主総会の決議により定款を変更しなければならず、この定款変更の決議は、通常の定款変更の場合の特別決議と同じく、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行われる。

イ 譲渡制限の定めのある株式を他人に譲り渡そうとする株主は、譲渡による株式の取得について承認をするか否かの決定をすることを会社に対して請求できるが、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがない場合を除き、当該株式を譲り受ける者と共同して行わなければならない。

ウ 譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得について承認をするか否かの決定をすることを請求された会社が、この請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に譲渡等の承認請求をした者に対して当該決定の内容について通知をしなかった場合は、当該会社と譲渡等の承認請求をした者との合意により別段の定めをしたときを除き、承認の決定があったものとみなされる。

エ 譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社は、対象となる株式の全部または一部を買い取る者を指定することができ、この指定は定款に別段の定めがない限り、取締役会の決議によって行う。

オ 譲渡制限の定めのある株式の譲渡による取得を承認しない旨の決定をした会社が当該株式を買い取る場合は、対象となる株式を買い取る旨、および会社が買い取る株式の数について、取締役会の決議により決定する。


1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 エ・オ



解答 4


本問は、譲渡制限株式の買取請求など少し細かいところからの出題ですが、組合せ問題ということもあって、肢アと肢オの正誤がわかれば正解にたどり着くことができます。肢アは、基本問題なので、消去法で何とか肢4か5で悩むところまではいってほしいです(テキストP36~、61~など)。


肢ア 誤

全部の株式を譲渡制限とする定款の変更(第309条3項1号)の場合は、今まで株式を自由に譲渡できた会社が譲渡制限会社になるので、株主の投下資本回収の手段が著しく制限されることになります。

つまり、株主にとって株式譲渡というのが唯一の投下資本回収の手段ですので、それが制限されるとなると株主の利益を著しく害することになるのです。

そのため、このような不利益を受けてもかまわないという株主が多数いなければ成立しないので定款変更であってもこの場合は特殊決議となっているのです。

具体的には、株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の3分の2以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)に当たる多数をもって行わなければならないのです。

肢イ 誤

本問は、136条からの出題です。

第136条  

譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

したがって、譲渡制限株式の株主は、当該株式を譲り受ける者と共同ですることなく単独で請求することができます。

肢ウ 正

本問は、第145条からの出題です。

第145条

 次に掲げる場合には、株式会社は、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をする旨の決定をしたものとみなす。ただし、株式会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、この限りでない。

一  株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の規定による請求の日から二週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内に第百三十九条第二項の規定による通知をしなかった場合

第136条  

譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

第137条第1項

譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

肢エ 正

譲渡承認機関となるのは取締役会設置会社では取締役会であり、取締役会非設置会社では株主総会となるのが原則です(139条1項)。

なお、会社にとって重要なことは、会社の経営にとって都合の良くない者を排除することなので、定款で譲渡承認機関を代表取締役などに決定することも出来ます(139条1項但書 140条5項但書)。

譲渡承認機関をどこの機関に任せるかは手続的なことなので、定款自治に委ねても問題がないからです。

肢オ 誤

本問は、第140条からの出題です。

第140条  

1 株式会社は、第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求を受けた場合において、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式(以下この款において「対象株式」という。)を買い取らなければならない。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

一  対象株式を買い取る旨

二  株式会社が買い取る対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)

2  前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。




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