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民法 身分法(H26-35) 


利益相反行為に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。


ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。

イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。

エ 親権者が、自らが債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。

オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。


1 ア・イ

2 ア・エ

3 イ・ウ

4 ウ・エ

5 エ・オ



解答 5



利益相反行為については、テキストで詳細に解説してあるので、組合せ問題ということもあって是非とも正解していただきたい問題です。


テキストP783~785


判例では、利益相反行為に該当するかどうかの判断基準は、親権者が子を代理してした行為自体を外形的・客観的に判断すべきであって、親権者の動機・意図という主観を考慮にいれて判断すべきでないとされています(形式的判断説)。

この判断基準を前提とすると、利益相反行為に当たる事例と当たらない事例が以下の通りになります。

形式的に子の財産で、親が利益を得ているか、または不利益を免れているかという点に着目して事例を分析してみましょう。


<利益相反行為に当たる事例>


①子の財産を親権者に譲渡する行為

→ 子の財産で、親が利益を得ています。

本問の肢ウに類似する事例です。

肢ウは、無償ではなく有償譲渡です。例えば、親子で売買契約をする場合なので、価格が適正であっても、子の財産で親が利益を得ます。

ですから、利益相反行為にあたります。

利益相反行為をする際は、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。

 特別代理人を選任せずに代理人が直接行った利益相反行為は、無権代理となります。

利益相反行為の場合、その法定代理人が自己の利益追求のための判断をしてしまう恐れがあるので、第三者が公平な判断をするべきだからです。

無権代理行為は、無効ではなく、その子が成年に達した後に追認の余地があるものです。


②子を貸主として親権者や親権者が代表する会社が借り入れをする行為

→ 子の財産で、親が利益を得ています。


③親権者の負う債務につき、子を連帯債務者にしたり、保証人にしたり、子の不動産に抵当権を設定する行為

→ 親の債務を子供が担保しているので、子の財産で、親が不利益を免れています。

本問の肢エの事例です。


④他人の債務につき、親が連帯保証人になると共に、子を保証人にしたり、子の不動産に抵当権を設定する行為

→ 親も連帯保証人ですが、子が保証人や抵当権設定者として加わることで、親の財産が減るリスクが減少します。つまり、債権者が親ではなく子の財産を実行して債務の弁済を得られれば、親の連帯債務は消滅します。そういう意味で、子の財産で、親が不利益を免れています。

本問の肢オの事例です。


⑤子の教育費に充てるため親が債務者として借金し、子の不動産に抵当権を設定する行為

→ 親の債務を子供が担保しているので、子の財産で、親が不利益を免れています。


⑥親権者も相続人である遺産分割の協議

→ 親権者もその子も相続人である場合、例えば、AB間の子Cがいて、Aが死亡すると、BCでAの相続について遺産分割の協議をすることになりますが、BがCの代理人として遺産分割協議するとなるとBに有利に相続できるように協議することになるので、子が本来相続できる財産で、親が利益を得ていることになります。

本問の肢アの事例です。


⑦親権者も相続人である場合に、子についてのみする相続放棄

→ ⑥と同様に、子の相続放棄を代理すれば、Bのみが相続人となるので、Aの財産全てを相続することになります。ですから、子が本来相続できる財産で、親が利益を得ていることになります。


<利益相反行為に当たらない事例>


①親権者が子に財産を無償譲渡する行為

→ 親の財産で子が利益となります。


②親権者が第三者の債務の担保のため、子を代理して子にのみ連帯保証や抵当権設定などの担保を負担させる行為(親の債務の負担が軽減するわけではないから)

→ あくまでも第三者の債務担保のため、子に担保を負担させる行為であって、親の債務の負担が軽減するわけではありません。

本問の肢イの事例です。


③親権者自身が使う目的で、子の名義で借り入れをして子の不動産に抵当権を設定する行為(代理権の濫用の問題となる)

→ 子の債務を、子自身の財産で担保するので、親の利益になるわけではなく、また子に不利益にはなりません。


④親権者も相続人である場合に、自己と子が共に行う相続放棄

→ 親も相続放棄するなら、相続財産を得られないので親の利益になるわけではなく、また子に不利益にはなりません。


以上より、肢イ以外は、全て利益相反行為にあたるので、エとオが妥当であり、5が正解となります。










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