商法・会社法 (H26-38)
取締役会設置会社であり、種類株式発行会社でない株式会社(委員会設置会社を除く。)が行う株式の併合・分割等に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、定款に別段の定めはないものとする。
1 株式を併合するには、その都度、併合の割合および株式の併合がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
2 株式を分割するには、その都度、株式の分割により増加する株式の総数の分割前の発効済株式の総数に対する割合および当該株式の分割に係る基準日ならびに株式の分割がその効力を生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
3 株式の無償割当てをするには、その都度、割り当てる株式の数およびその効力の生ずる日を、株主総会の決議によって定めなければならない。
4 株式の分割によって定款所定の発行可能株式総数を超過することになる場合は、あらかじめ株主総会の決議により発行可能株式総数を変更するのでなければ、このような株式の分割をすることはできない。
5 株券発行会社が株式の併合または分割をしようとするときは、いずれの場合であっても、併合または分割の効力が生ずる日までに、当該会社に対し当該株式に係る株券を提出しなければならない旨の公告を行い、併合または分割した株式に係る株券を新たに発行しなければならない。
解答 1
株式併合・分割に関連する条文知識問題です。基本的な問題なので是非とも正解したい問題です。
テキストP37、168
肢1 正
株式併合とは、数個の株式を合わせてそれよりも少数の株式とすることをいいます(180条)。
下落した株価を上げたり、株式の管理コストを削減したりする場合になされます。
例えば、3株の株式を1株にするような場合です。
もっとも、株式分割と異なるのは、例えば100株を有する株主の場合、3株を1株にすると、33株になり、1株が余ります。
この余った株については、競売して得たお金を分配することになります。
このように、端数となる株式が生じるので、株主が有していた従前の株式数よりも減少する場合があり、株主にとって不利益となります。
端数が生じる株主と生じない株主があらわれることになるので、法律上の株主平等の原則の例外となります。
そのため、株式併合の場合は、株主総会の特別決議が必要となるのです(180条2項 309条2項4号)。
第180条
1 株式会社は、株式の併合をすることができる。
2 株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 併合の割合
二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
肢2 誤
株式分割とは、株式を細分化して従来よりも多数の株式にすることをいいます。
例えば、株価が高騰しすぎている状態にあるときに、その株価を引き下げたりする場合に株式分割がなされます。
単に株式数のみが増加し、会社の資産や株主の利益にも変化はありません。
例えば、1株を3株に分割した場合、各株主の株式数が3倍に増加するだけのことです。ですから、取締役会設置会社では取締役会、取締役会非設置会社では株主総会の普通決議で株式分割をすることができるのです(183条)。
第183条
1 株式会社は、株式の分割をすることができる。
2 株式会社は、株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式の分割により増加する株式の総数の株式の分割前の発行済株式(種類株式発行会社にあっては、第三号の種類の発行済株式)の総数に対する割合及び当該株式の分割に係る基準日
肢3 誤
株式無償割当とは、株主に対してその株式の数に応じた一定割合で、払込をさせずに株式を発行したり、自己株式の交付を行うことをいいます。
たとえば、株主全員に対し、その所有する普通株式1株につき普通株式1株を無償で与えるという制度です。
株式無償割当を行う場合、取締役会決議(取締役会設置会社で無い場合は株主総会の普通決議)が必要となります。
株式分割の場合には同種類の株式だけが増えることになりますが、株式無償割当の場合には、同一種類の株式(普通株式を所有する株主に対し新たに普通株式)、または種類株式発行会社においては同一もしくは異なる種類の株式(A種類株式を所有する株主に対し新たにB種類株式)を割り当てることができます。
第186条
1 株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に割り当てる株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
二 当該株式無償割当てがその効力を生ずる日
3 第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
肢4 誤
第184条2項
株式会社(現に二以上の種類の株式を発行しているものを除く。)は、第四百六十六条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、前条第二項第二号の日における発行可能株式総数をその日の前日の発行可能株式総数に同項第一号の割合を乗じて得た数の範囲内で増加する定款の変更をすることができる。
肢5 誤
定款で株券を発行する旨の定款の定めをおいた株券発行会社の場合、株式の譲渡には株券の交付が必要です(128条1項)。
そのため、株式の併合により、例えば、3株の株式を1株にするような場合、この新しい株式に対して株券の交付が必要となります。また、株式分割をした場合、新しく株式を発行するので株券の交付が必要となります。
なお、株式併合の場合、株をひとまとめにするため、既存の株券を回収する必要がありますが、株式分割の場合は、新しく株式を発行するだけなのでそのような必要はありません。
第219条
1 株券発行会社は、次の各号に掲げる行為をする場合には、当該行為の効力が生ずる日(株券提出日)までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の一箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。
二 株式の併合 全部の株式
第215条
1 株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない。
2 株券発行会社は、株式の併合をしたときは、第百八十条第二項第二号の日以後遅滞なく、併合した株式に係る株券を発行しなければならない。
3 株券発行会社は、株式の分割をしたときは、第百八十三条第二項第二号の日以後遅滞なく、分割した株式に係る株券(既に発行されているものを除く。)を発行しなければならない。