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行政法 行政不服審査法 (H27-14)


行政不服審査法に基づく審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


1 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法であるとき、または審査請求に理由がないときは、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下する。

2 不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請を認める処分をすべき旨を命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言する。

3 処分についての審査請求に理由があり、審査庁が裁決で当該処分の変更を命ずることができる場合において、公の利益に著しい障害が生じることを防ぐため必要があると認めるときは、審査庁は、審査請求人の不利益に処分の変更を命ずることもできる。

4 事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる。

5 処分についての審査請求の裁決には、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様の事情裁決の制度があるが、事情裁決が行われるのは、処分が違法である場合に限られ、処分が不当である場合には行われない。


解答 4  


テキストP217~233


肢1 誤

45条1項2項からの出題です。

『第45条(処分についての審査請求の却下又は棄却)

1 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。

2 処分についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。』

審査請求に理由がない場合、つまり処分庁の処分等が、違法または不当なものでなかった場合は、棄却裁決がなされます。

 理由がないということは、審理で提出された事実と証拠の内容を調べた上で判断したということです。

 1項の却下裁決とは異なる点に注意してください。

肢2 誤

49条3項からの出題です。

『第49条3項(不作為についての審査請求の裁決)

不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言する。この場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。

一. 不作為庁の上級行政庁である審査庁 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。

二. 不作為庁である審査庁 当該処分をすること。』

不作為についての審査請求に理由があるときは、裁決で請求認容します。

具体的には、審査庁は、当該不作為庁に対しすみやかに申請に対する一定の処分をすべきと認められる場合、①不作為庁の上級行政庁である審査庁であれば、当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命じ、②不作為庁である審査庁であれば、当該処分をするのです。

本肢では、①の場合のみしか記述していませんが、②の場合もあるので、審査庁が上級行政庁か不作為庁かで対応が異なるという点を押えて置いてください。

肢3 誤

48条からの出題です。

第48条(不利益変更の禁止)

第46条第1項本文(処分についての認容裁決)又は前条の場合において、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。

審査庁に変更権はあるとしても、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実行為を変更すべきことを命ずることはできません。行政不服審査法の目的は、国民の権利・利益を救済することです。

もし、審査請求をして審査請求人の不利益に当該処分を変更できるなら、不利益となるリスクを取ってまで審査請求しないでしょう。

例えば、営業免許停止処分に対して審査請求をしたにもかかわらず、営業免許取消処分というより重い処分がなされれば、国民の権利・利益を救済することにならず目的に反します。不服の対象となる処分以上には不利益とならないから、行政不服審査制度を利用しようと思うのです。これを、不利益変更禁止の原則といいます。

肢4 正

47条1号からの出題です。

『第47条

事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとる。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。

一. 処分庁以外の審査庁 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。』

肢5 誤

45条3項(事情裁決)からの出題です。

『第45条3項(事情裁決)

審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決の主文で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。』

結論は形式的には、棄却裁決であるが、実質的には認容裁決なので処分が違法又は不当であることを明確にするために、裁決の内容として宣言するのです。行政事件訴訟法の事情判決と異なり、「不当」も含まれる点に注意しましょう。






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