行政法 行政不服審査法 (H27-15改題)
処分についての審査請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 審査請求の審理は、書面によるのが原則であるが、申立人の申立てがあった場合には、審理員は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。
2 審査請求は、行政の適正な運営を確保することを目的とするため、一般概括主義がとられており、国会および裁判所が行う処分以外には、適用除外とされている処分はない。
3 審査請求は、行政の適正な運営を確保することを目的とするため、対象となる処分に利害関係を有さない者であっても、審査請求期間であれば、これを行うことができ る。
4 審査請求は、簡易迅速に国民の権利利益の救済を図るための制度であるから、審査請求が行われた場合には、処分の効力は、裁決が行われるまで停止する。
5 審査請求は、簡易迅速に国民の権利利益の救済を図るための制度であるから、審査請求に対する審査庁の判断が一定期間内に示されない場合、審査請求が審査庁によって認容されたとみなされる。
解答 1
テキストP184~
肢1 正
第31条1項からの出題です。
『審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。』
なお、平成26年改正によって影響がでるところですので、「審査庁」を「審理員」に改正に対応した形に直しております。
肢2 誤
『第7条(適用除外)
次に掲げる処分及びその不作為については、第2条(処分についての審査請求)及び第3条(不作為についての審査請求)の規定は、適用しない。
十. 外国人の出入国又は帰化に関する処分
十一. 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分』
このように、帰化に関する処分や試験の結果についての処分についても適用除外となっています。
肢3 誤
当事者適格を問う問題です。当事者適格とは、当事者能力があることを前提に、特定の争訟において当事者として承認される具体的な地位ないし資格をいいます。
行政事件訴訟法9条のような原告適格をとしての規定はないですが、解釈上行政不服審査法においても、当事者適格が必要であると考えられています。
具体的には、処分につき審査請求できるのは、「行政庁の処分に不服がある者(2 条)」、不作為につき審査請求できるのは、「法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者(3 条)」です。
違法・不当な処分を取消すことによって、侵害された自己の権利利益の回復が得られる者、つまり不服申立ての利益を有する者だけが審査請求をすることができるのです。
このような利益を法律上の利益といい、法律上の利益を有する者でなければ審査請求をすることができないのです。
例えば、不利益処分を受けた者は、原則として当事者適格を有します。
よって、対象となる処分 に利害関係を有さない者であっても、審査請求期間であれば、これを行うことができるわけではない。
肢4 誤
『第25条1項
審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。』
これを執行不停止原則といいます。
肢5 誤
審査請求に対する審査庁の判断が一定期間内に示されない場合、審査請求が審査庁によって認容されたとみなされるというわけではありません。
この場合、不作為の違法確認の訴えを提起することができます。
『行政事件訴訟法3条5項
この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。』