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民法 物権 (H13-28)


Aは、Bに対する債務を担保するため、BのためにA所有の甲地に抵当権を設定し、この抵当権が実行されてCが甲地を買い受けた。

法定地上権に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


1 抵当権設定当時甲地にA所有の建物が建っていたが、Aが抵当権設定後この建物を取り壊して旧建物と同一規模の新建物を建てた場合、新建物のために法定地上権は成立しない。

2 抵当権設定当時甲地にA所有の建物が建っていたが、Aが抵当権設定後この建物をDに譲渡し、Dのために甲地に賃借権を設定した場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

3 抵当権設定当時甲地にはE所有の建物が建っていたが、抵当権設定後この建物をAが買い受け、抵当権実行当時この建物はAの所有となっていた場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

4 Bのための一番抵当権設定当時甲地は更地であったが、Fのために二番抵当権が設定される前に甲地に建物が建てられた場合、Fの申立てに基づいて土地抵当権が実行されたときは、この建物のために法定地上権が成立する。

5 抵当権設定当時甲地にはA所有の建物が建っていたが、この建物が地震で倒壊したため、抵当権者の承諾を得て建物を建築することになっていた場合、競売後に建物が建築されれば、その建物のために法定地上権が成立する。




解答 3


法定地上権を発生させるために、成立要件は以下の4つとなります。


(1) 抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること

(2) 土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されたこと

(3) 抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一であること

(4) 抵当権実行により土地・建物の所有者が異なったこと


この要件に事例をあてはめて考えてみましょう。


1 誤

上記4つの要件を全て満たすので、法定地上権は成立します。

抵当権者からすれば、抵当権設定当時に旧建物について法定地上権が成立するのは、折込済みです。

そのため、抵当権設定後に建物を取り壊して、旧建物と同一規模の新しい建物ができたとしても、実行によって、法定地上権を成立させても抵当権者に不利益となりませんね。

逆に、建物の老朽化に伴い、同規模の新築建物を建築した場合に、法定地上権が成立しないことになると、建物所有者にとって不利益となります。

ですから、このような場合も法定地上権が成立するのです。よって、誤りです。


2 誤

上記4つの要件を全て満たすので、法定地上権は成立します。

抵当権設定後に、建物が譲渡され、土地の賃借権が設定されていますが、抵当権の実行により土地が第三者の所有になれば、抵当権に劣後する賃借人は対抗できませんね。

この場合は、法定地上権が成立するので、Dは土地の利用を続けることができるのです。

よって、誤りです。


3 正

抵当権設定当時甲地にはE所有の建物が建っていたので、(3) 抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一であること の要件を満たしませんね。

E所有の建物が建っていたということは、当初から土地には賃借権があったので、抵当権者はそれを前提にしています。

抵当権設定後に、Aが建物を取得しても、賃借権は混同(520条)により消滅しません。

ですから、法定地上権は成立しません。

よって、正しいです。


4 誤

Bの抵当権の設定当時に更地であったので、(1) 抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること の要件を満たしませんね。

Bはあくまでも更地の価値に対して抵当権を設定しているのですから、法定地上権が成立するとBにとって不利益となりますね。

仮にFの二番抵当権設定時には、建物が土地上に存在していたとしても、FはBに劣後する抵当権者ですから、抵当権の実行によって、Bの不利益になってはいけません。ですから、法定地上権は成立しません。

よって、誤りです。


5 誤

競売後に建物が建築されるので、実行時には建物がなく、 (4) 抵当権実行により土地・建物の所有者が異なったこと の要件を満たしませんね。

買受人にとっては、建物がない状態で競売しているので、法定地上権を予定していないですから、成立しません。ですから、法定地上権は成立しません。よって、誤りです。




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