行政法 行政不服審査法 (H19-15)
次の文章の空欄[ア]~[キ]のうち空欄[A]と同じ言葉が入るものはいくつあるか。
行政不服審査法に基づき審査請求がなされたとき、処分の効力、処分の執行、手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置を行うか行わないかに関して、行政不服審査法34条1項は、行政事件訴訟法と同様、[A]原則を選択している。私人の権利利益救済の観点からは[ア]原則が望ましく、公益を重視する観点からは[イ]原則が望ましいといえる。
行政不服審査法の下においては、処分庁の上級行政庁である審査庁は職権により[ウ]をすることができる。これに対して、処分庁の上級行政庁以外の審査庁は、審査請求人の申立てにより[エ]とすることができるのみであり、裁判所と同様、職権により[オ]とすることはできない。これは、処分庁の上級行政庁である審査庁は、処分庁に対して一般的指揮監督権を有するから、職権に基づく[カ]も一般的指揮権の発動として正当化されるという認識による。なお、国税通則法105条1項のように、個別法において[キ]原則に修正が加えられている場合もある。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
(参考)国税通則法105条1項「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては、その目的となった処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。ただし、その国税の徴収のため差し押えた財産の滞納処分(その例による処分を含む。以下この条において同じ。)による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は不服申立人(不服申立人が処分の相手方でないときは、不服申立人及び処分の相手方)から別段の申出があるときを除き、その不服申立てについての決定又は裁決があるまで、することができない。」
解答 2
A「執行不停止」
ア「執行停止」イ「執行不停止」ウ「執行停止」エ「執行停止」
オ「執行停止」カ「執行停止」
キ「執行不停止」
不服申立てがなされた場合、処分の効力のみならず、処分の執行または手続きの続行は原則として、妨げられませんから、停止されないですね。これを、執行不停止の原則といいます。
行政行為などの処分等には、公定力があり、取消されるまでは有効ですし、行政庁には、円滑・迅速に行政サービスを国民に提供するという役割もあります。
ですから、審査請求などがされたとしても、処分等が違法で取消されることが明確になるまでは、処分の効力、処分の執行または手続きの続行は原則として、妨げられないのです。
「審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。(34条1項)」
このような基本的理解があれば、本問も簡単に正解できたのではないでしょうか。後は、数え間違いなどのケアレスミスにだけ注意すればいいのです。
Aに入るものは、(参考)として出されている、国税通則法105条1項の最初の2行を読めば行審法34条1項と同じことが書かれていますからヒントになるでしょう。
A=執行不停止の原則ですね。
ア:「私人の権利利益救済の観点」
私人にとってみれば、処分の執行が停止されれば、自己の権利利益を害されることはないですね。ですから、アには、執行停止 が入ります。
イ:「公益を重視する観点」
公益を重視すれば、処分の執行が継続されるべきですね。
イには、執行不停止が入ります。
ウ~カまでは文脈から同じ語句が入ることがわかります。
ただ、それが職権で可能なのか、それとも審査請求人の申立てによるのかということです。
原則は、執行不停止であり、「審査請求人の申立て」からも分かるとおり、これらウ~カには、全て「執行停止」が入ります。
キ:国税通則法105条1項の原則(本文)と例外(但書)
「[キ]原則に修正」とあるので「執行不停止」が入ります。
よって、Aと同じものが入るのは、イとキの2つですね。