行政法 行政不服審査法 (H24-14)
行政不服審査法に基づく不服申立てに関する次の記述のうち、法令または判例に照らし、妥当なものはどれか。
1 行政不服申立てにおいては、行政処分の取消しを求めることだけではなく、公法上の法律関係の確認を求めることも許される。
2 行政不服審査法は、不服申立ての対象となる行政処分については、いわゆる一般概括主義を採用しており、不服申立てをすることができない処分を列挙してはいない。
3 行政処分について審査請求の申立適格を有するのは、処分の相手方に限られ、それ以外の第三者は、他の法律に特別の定めがない限り、申立適格を有しない。
4 憲法による適正手続の保障の趣旨は、不服申立ての審理手続にも及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされている。
5 審査請求の裁決は、書面でしなければならず、緊急を要する場合であっても、口頭ですることは認められていない。
解答 5
肢1 誤
行政庁の処分または不作為によって、不当な制限を受けた国民の権利・自由を事後的に救済するために行政不服審査法があるのです。
そのため、行政不服申し立ては、行政庁の処分または不作為が対象であり、公法上の法律関係の確認は対象ではありません。
肢2 誤
行政不服審査法は、一般概括主義を採用しています。
一般概括主義とは、不服申立ての一般法であって(1条2項)、国民に対して広く不服申立ての道を開くため、原則として行政の処分ならば何でも不服申し立てることができる考え方です。ただし、4条1項各号では、処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがあります。
したがって、不服申立てをすることができない処分を列挙しているのです。
肢3 誤
当事者適格とは、当事者能力があることを前提に、特定の争訟において当事者として承認される具体的な地位ないし資格をいいます。
解釈上行政不服審査法においても、当事者適格が必要であると考えられています。
違法・不当な処分を取消すことによって、侵害された自己の権利利益の回復が得られる者、つまり不服申立ての利益を有する者だけが異議申立てや審査請求をすることができるのです。
このような利益を法律上の利益といい、法律上の利益を有する者でなければ不服申立てをすることができないのです。
不利益処分を受けた者は、原則として当事者適格を有します。
また、処分された当事者以外の第三者であっても法律上の利益があれば、不服申立てをすることができます。
肢4 誤
行政不服審査法は、簡易迅速な紛争解決手続です。
それゆえ、実体審理手続においても書面主義が原則です(25条1項)。
書面審理主義は、資料が確実で簡易迅速にできるという利点もありますが、その一方で印象が間接的で、また当事者の真意を汲みにくいという欠点もあります。
このような書面審理主義の欠点を補うために、審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人又は参加人の申立てにより、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えることができるのです。
肢5 正
第41条1項
裁決は、書面で行ない、かつ、理由を附し、審査庁がこれに記名押印をしなければならない。裁決は、審査庁の意思を明確に外部に表示するため書面で行ないます。
その上で、審査庁の責任を担保するために、理由を附し、審査庁がこれに記名押印をしなければなりません。
書面+理由+記名押印が裁決のワンセットですので、押さえておきましょう。なお、決定にも準用されています(48条)。